「除夜の鐘」の意味/108回の理由と鐘をつく時間帯

除夜の鐘

「除夜の鐘」は、大晦日の夜(除夜)の時間帯につく鐘で、通常は108回つかれます。

「除夜につく鐘」だから「除夜の鐘」と呼ばれるわけですが、除夜とは「除日の夜」ということです。

「除」には「古いものを捨てて新しいものに移る」という意味があるので、「除日」とは「一年の一番最後の日」すなわち「大晦日」ということで、「除夜」=「除日の夜」=「大晦日の夜」ということになります。

毎年、大晦日の夜(除夜)につかれる「除夜の鐘」にはどんな意味があり、鐘を108回つくのにはどんな理由があるのでしょう。

「除夜の鐘」の意味

「除夜の鐘」は、大晦日の夜につかれる寺院の鐘ですが、この寺院の鐘は「梵鐘」と呼ばれます。

「梵鐘」は、除夜につく以外にも、朝夕の時を知らせたり、法要の開始を知らせたりする時などにもつかれます。

また、僧侶が煩悩にとらわれてしまっているような時には、梵鐘をついて鳴らすことで、自分がいま何をなすべきかということを再確認させる役割もあり、梵鐘の響きを耳にするということには、一切の苦から逃れ、悟りを開くために必要な「功徳」を積むという意味も含まれているとされています。

さらには、寺院の周りに住む人に対して、現世の苦をやわらげ、いつの日か悟りを開けるようにするというような意味合いもあるとされています。

「煩悩」は、日頃から修行を積むことで取り除くことができるとされますが、「除夜」に「梵鐘」をつくことで、厳しい修行を積んでいない人の心の乱れや汚れなどを祓うことができる、と信じられてきました。

「除夜の鐘」には、一年間の心の乱れや煩悩を取り除き、清らかな心で新年を迎えることができるようにとの思いが込められているといわれます。

「除夜の鐘」を108回つく理由

「除夜の鐘」を「108回」つく理由は、「108つの煩悩を祓うため」「四苦八苦を取り払うため」「12ヶ月+24節気+72候」「108=とても多い」などの諸説があります。

108つの煩悩を祓うため

人の心には、心をかき乱す執着心や欲望などの「煩悩」が「108」あるとされていて、この「108つの煩悩」を祓うために、鐘を108回つくという説です。

この説が、最もポピュラーで有名な説です。

仏教では、人は「眼、耳、鼻、舌、身(身体)、意(意識)」の「六つの感覚」(六根)をもっているとされています。

「五感が鋭い」というときの「眼、耳、鼻、舌、身」の五つの感覚器官に、「第六感が働く」といわれる「意識」が加わった、全部で六つの感覚です。

これらには、「好(気持ち良い)、悪(気持ち悪い)、平(どちらでもない)」の「三つ」の感じ方があり、
さらに、その感じ方も「浄(きれい)、染(きたない)」の「二つ」があり、
これらが「前世、今世、来世」の「三つ」の時に心を悩ませるといいます。

これら全部で、6 × 3 × 2 × 3 = 108

これら108つの煩悩を祓うため、除夜に鐘を108回つくという説です。

ちなみに、「数珠の玉の数」も正式には「108個」です。

数珠の玉を繰りながら念仏を唱えることで煩悩が消えていき、1周めぐれば108の全ての煩悩が清められるとされています。

四苦八苦を取り払うため

四苦八苦を取り払うために除夜の鐘をつくという説です。

四苦+八苦 = 4×9+8×9 = 36+72 = 108

語呂合わせで、たまたま「108」になったという感もありますが、感覚的に分かりやすい理由です。

十二月+二十四節気+七十二候

一年は「十二月」あり、「二十四節気」は一年を24等分したもので、この24節気をさらに3等分したものが「七十二候」です。

二十四節気には、立春・立夏・立秋・立冬・夏至・冬至・春分・秋分などがあり、七十二候は、それぞれの節気を、初侯・次候・末候に分けたものです。

これら一年を表す、月の数「12」、節気の数「24」、候の数「72」を加えた、「108」を除夜の鐘でつくという説です。

「二十四節気」の意味と読み方 >

「七十二候」の意味と読み方 >

「除夜の鐘」をつく時間帯

「除夜の鐘」といえば、大晦日の夜23時45分頃から始まる、NHKの「ゆく年くる年」。

しかし、15分では108回の鐘をつくことはできないので、実際には、もう少し早い時間から鐘がつかれ始めています。

多くの寺院では、除夜の鐘は、23時前後からつき始められます。

「除夜の鐘のつき方」としては、107回までを旧年中につき、最後の1回は新年になると同時につく(午前0時につく)というのが正式なつき方とされています。

旧年中に108つのすべての煩悩を祓ってしまい、清らかな心で新しい年を迎えるというわけです。

しかし、最近では、近隣の住民から「夜に鐘をつくのはうるさくて迷惑」などの苦情があり、鐘をつく時間帯を昼間や夕方の時間帯に変更する寺院もあるといわれます。

この場合は、夜に鐘をつくわけではないので、「除夜の鐘」ではなく「除日の鐘」と称することもあります。

「除日の鐘」は、日中に鐘をつくということで、大晦日のイベントとしても参加しやすく、寺院への参拝者も増えるという、思わぬ効果を生み出したりもしているといわれます。

今後は、大晦日の日中に鐘をつく「除日の鐘」を実施する寺院が増えてくるのかもしれません。

まとめ

海外では、花火やパーティーなど、派手で気持ちがワクワクするような年越しイベントもありますが、日本の「除夜の鐘」は、神聖で重厚な鐘の音が、心を静めて清らかな気持ちにさせてくれます。

除夜の鐘を聞きながら、これまでの一年間を振り返り、新たな一年の始まりに当たって気持ちを新たにするというのは、日本ならではの風習といえます。

時代が変わっていっても、昔ながらの趣ある「除夜の鐘」の風習は残っていってほしいです。