「カレーは、一晩寝かせると美味しくなる。」とよく言われます。
「作りたてのカレー」も美味しいですが、「一晩寝かせたカレー」を温め直して食べると、前日に食べたカレーよりも、確かに美味しくなっているように感じます。
これは、「気のせい」ではなく、「一晩寝かせたカレー」は、実際に「旨み成分」が溶け出して、コクが増しているのだといわれます。
溶け出す「旨み成分」
カレーを一晩寝かせると、「肉」「野菜」「スパイス」などから、「グルタミン酸」「アミノ酸」などの旨み成分が溶け出すため、「コク」のある味になるといわれています。
また、カレーに入っている「具材」が煮崩れして、繊維分やデンプンなどが増え、「とろみ」が出て、舌が味を感じやすくなるともいわれます。
一晩寝かせたカレーを温め直すとき、少し水を加えないと、焦げつきやすくなるのは、この「とろみ」のためです。
さらには、スパイスの刺激的な香りが飛ぶので、味も「まろやか」に。
「まろやかさ」よりも、ピリッとした「刺激のある香り」が好みの場合は、温め直すときには、少量の「カレー粉」や「スパイス」などを加えるといいかもしれません。
その他にも、材料に味がしみたり、油の粒が小さくなったりして、舌触りがよくなって、複雑な味が感じられるようになるなどの理由もあるようです。
カレーをたっぷりと作っておけば、翌日には、コクのある違った美味しさのカレーが楽しめるというわけです。
特に、家庭で作るような「具材がたくさん入っているカレー」は、寝かせて熟成させるのに適しているといわれています。
カレーを寝かせた際の「食中毒」
一晩寝かせたカレーは、コクが出て、まろかやで美味しく感じるようになる一方で、「細菌が増殖しやすい」ともいわれています。
特に、注意が必要なのが「ウェルシュ菌」という細菌です。
カレーを一晩寝かせる時の「保存方法」が適切でないと、「ウェルシュ菌」が増えて、「食中毒」を起こしてしまう危険があるといわれます。
ウェルシュ菌
「ウェルシュ菌」は、土壌や下水等、自然界に広く生息しているとされる細菌ですが、この菌が、食中毒を引き起こす原因になることがわかっています。
粘り気が強くなったカレーは、ウェルシュ菌が増えやすいとされる環境であり、さらに、常温保存も菌が増殖しやすい環境であるといわれます。
ウェルシュ菌は、空気を嫌う性質があるので、カレーの鍋底など、酸素が少ない環境で増殖しやすいとされています。
ウェルシュ菌自体は、熱に弱いとされますが、硬い殻を持った「芽胞(がほう)」という丈夫な殻を作ることで、高温の中でも生き残ることができるようになり、「100℃の高温で加熱しても死ななくなる」といわれます。
このため、カレーを食べる前に、再加熱したとしても、完全に菌を殺すことは難しいとされています。
菌をできるだけ増やさないということが、とても重要になります。
ウェルシュ菌を増やさない「保存方法」
ウェルシュ菌は、20℃~50℃程度の温度で、増殖しやすいといわれています。
このため、「冷蔵庫」や「冷凍庫」など、低い温度で保存することで、菌の増殖のスピードを抑えることができるとされています。
また、ウェルシュ菌は、酸素がないところを好む菌なので、小さな容器などに「小分け」にして、表面積を増やすことでも、増殖のスピードを抑えることができるともいわれます。
カレーを一晩寝かせる際には、適切な「保存方法」で保存することが大切です。
適切に保存されていた場合でも、一晩寝かせたカレーを、温め直して食べる時には、しっかりと加熱してから食べることが、とても重要になります。
しっかりと加熱することで、芽胞を形成していない菌を殺菌することができるからです。