日本の幽霊に「足がない」理由は?

「幽霊なのか、人間なのかを、どう見分けますか?」と尋ねられたら、「足元を見て、足があるかどうかを確認する。」と答える人も多いかもしれません。

日本では、「幽霊には、足がない」ということが、一般的な捉えられ方だからです。

しかし、幽霊に足がないと考えられているのは、日本だけで、海外の幽霊には、ちゃんと足がついています。

日本と外国とでは、幽霊の捉え方に、違いがあるのでしょうか。

幽霊の基本的な捉え方

日本の幽霊は、無残な死に方をしたり、この世に、強い思いを残して死んでいった人の魂が、形となって、現れたものとされますが、手厚く供養をしたり、生前の望みをかなてあげたりすることで、成仏するとされています。

一方、西洋の幽霊も、手厚く弔われたり、望みがかなったりして、はじめて、冥界へ旅立っていくとされています。

「足が、あるかないか」を除けば、日本の幽霊も、外国の幽霊も、そんなに、大きな違いはないということになります。

日本の幽霊に足がなくなった、二つのルーツ

昔は、日本の幽霊にも、足があったといわれています。

その幽霊に、足がなくなったのは、「四谷怪談」と、円山応挙の「幽霊画」、この二つのルーツが考えられるとされています。

「四谷怪談」説

江戸時代に、歌舞伎で「四谷怪談」の演技をする際、幽霊の凄みを出すために、足を隠して「ヒュードロロ‥」という音を鳴らし、人魂とともに、幽霊を登場させるという演出がされました。

この演出が、観客の間で「とても怖い」と評判になり、これ以降、「人魂」と「足のない幽霊」が定番となり、「幽霊には、足がない」と考えられるようになったという説です。

「幽霊画」説

江戸時代中期の画家・円山応挙は、「足のない幽霊」を描く画家として有名です。

以前から、足のない幽霊は、描かれていたようですが、応挙が描く、足元がスッと消えている幽霊は、言いようのない不気味さがあり、人々に、強烈なインパクトを与えたといわれています。

この、応挙の描いた「足のない幽霊」が、定着していき、やがて、幽霊と言えば、足がないというイメージが定着していったという説です。

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これら、二つのことがなければ、ひょっとすると、日本の幽霊にも、足があったのかもしれません。