魚の「性転換」は珍しいことではない!

人間は、生まれた時には、男女の性別が決まっていて、生物学的に、自然に男性が女性に、また女性が男性に変わることはありません。

人間が、生きている間に「性別を変える」となると、かなり大変なことになります。

しかし、魚の世界では、この「性転換」は、そんなに珍しいことではありませんでした。

魚の「性転換」

海で生きている魚のうち、約300種の魚が「性転換」するといわれています。

魚類に、性別を変えることができる種類が多いのは、海中での「し烈な生存競争」を生き抜いていくためであろうといわれています。

「海は生命の源」ともいわれますが、それだけ「生存競争」も激しいと考えられています。

そんな厳しい環境のもとで、たくさんの子供を生み、多くの子孫を残していくための一つの手段が、魚の「性転換」というわけです。

魚の性転換には、二種類あるといわれています。

・雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)→オスからメスに転換
・雌性先熟(しせいせんじゅく)→メスからオスに転換

雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)(オス→メス)

ディズニー映画「ファインディング・ニモ」の「カクレクマノミ」は、生まれたときは、全てが「オス」ですが、成長すると「メス」に性転換するといわれます。

クマノミは、グループで生活をしていて、その中で一番大きいものだけが「メス」になることができ、メスになったものの次に大きいもの「オス」になり、「一夫一婦制」で生活するといわれています。

それ以外のものは、「メス」でも「オス」でもなく、生殖活動はしないとされています。

「メス」が死んでしまうと、「オス」が「メス」に性転換し、残りの中で最も大きいものが「オス」になるといいます。

このような「オス→メス」の性転換が、「雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)」と呼ばれます。

クマノミは、「イソギンチャク」という限られた生活の場で暮らしていますが、こうすることで、決して強くない魚のクマノミでも、一番大きなメスがたくさんの卵を産んで、子孫を残していくことができるというわけです。

このことは、卵をできるだけ多く産むことができるように、「大きい魚がメスになる」という「生殖戦略」といえるのかもしれません。

クマノミの他にも、「クロダイ」「コチ」「ハナヒゲウツボ」などが、この「雄性先熟」の性転換をするといわれています。

雌性先熟(しせいせんじゅく)(メス→オス)

クマノミとは逆に、はじめは「メス」で、後から「オス」になるものもあり、このような「メス→オス」の性転換は、「雌性先熟(しせいせんじゅく)」と呼ばれます。

性転換としては、こちらの方が一般的とされています。

「雌性先熟」は、「一夫多妻制」の魚に多く見られ、「ベラ」「ブダイ」「ハナダイ」「マハタ」「キュウセン」などが、この性転換をするといわれています。

「一夫多妻制」の魚の場合、体が大きな「オス」が、ライバルの「オス」たちを退けて、たくさんの「メス」を独占するので、体が小さな「オス」は、ほとんど子孫を残すことができないといわれます。

このため、体が小さいうち「メス」として卵を産み、大きくなってから性転換をして「オス」になって、「メス」に卵を産ませた方が、効率的と考えられます。

大きくなった「メス」は、自分で卵を産むよりも、「オス」になって、多くの「メス」に卵を産ませた方が、よりたくさんの子孫を残すことができるからです。

このため、体が大きくなるまでは「メス」として子孫を残し、体が大きくなったら「オス」に性転換して、多くの「メス」に卵を産ませるというのが、自分の子孫を最大限に残す方法になるというわけです。

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最近では、「メス→オス」「オス→メス」のいずれにも性転換できる種類の魚がいるということも、分かってきているようです。