意外かもしれませんが、現在の日本人が摂取しているエネルギー(カロリー)は、1975年(昭和50年)に比べると、かなり低くなっているといわれています。
厚生労働省の国民栄養調査によると、1975年には一日平均して2,188キロカロリーを摂取していましたが、2015年(平成27年)には1,889キロカロリーとなり、40年間で約300キロカロリー減少しています。
それでは、今の日本人が、40年前に比べて痩せているかといえば、そんなことはありません。
人口に対する肥満者の割合は、戦後一貫して増え続けていて、すべての年代で肥満者は増えているといわれています。
摂取カロリーが減っているのに、肥満の人が増えているのは、どうしてなのでしょう。
三大栄養素の摂取量の割合
1975年と2015年の三大栄養素の摂取量を比べると、次のとおりです。
・脂質:1975年 52.0g → 2015年 57.0g
・たんぱく質:1975年 80.0g → 2015年 69.1g
・炭水化物:1975年 337g → 2015年 258g
「たんぱく質」と「炭水化物」は減っていますが、「脂質」は逆に増えています。
三大栄養素の中で、「脂質」の摂取量だけが増えています。
「脂質」が「肥満」に関わっていることは間違いありませんが、「脂質の摂取量」が増えることだけが「肥満になる原因」かといえば、そういうわけでもないようです。
「肥満」は、「摂取エネルギー(カロリー)」と「消費エネルギー(カロリー)」のバランスです。
「摂取エネルギー」が減っても、それ以上に「消費エネルギー」が減ってしまうと、肥満になりやすくなってしまいます。
消費エネルギー(カロリー)
イギリスでは、1980年代から肥満者が急増していますが、この時、摂取する脂質の量は、むしろ減少傾向にあったといわれています。
脂質だけではなく、一日に摂取する総カロリーも減少していたといわれます。
にもかかわらず、肥満者が増えていった原因は何なのでしょう。
いくつかの説がありますが、有力なのは「自動車」と「テレビ」の普及が、大きな要因になったという説です。
少しの距離でも車を利用するようになり、家では長時間テレビを観るようになり、動くことが少なくなったことが原因になっていたというのです。
実際、肥満者が増えだした時期に、車に乗る人や長時間テレビを観るようになった人も増えているのだといいます。
肥満者が急増したのは、消費カロリーが減ったことが大きな要因だと考えられています。
日本の状況
日本でも、イギリスと同じような理由が考えられます。
1970年代といえば、日本でも、自動車やテレビは、まだまだ普及していく途上でした。
移動といえば、電車やバスが一般的で、自家用車でレジャーに出かける人は少数派で、一日中テレビを観ているというような人もほとんどいませんでした。
今よりも「動く」ことが多く、一日に消費するカロリーも、今よりもずっと多かったというわけです。
消費カロリーを増やす
カロリーを消費するのに必要なことは、「運動する」ことです。
しかし、今さら1970年代の暮らしに戻すことはできませんし、スポーツジムに通ったりエアロビクスを始めるというのも、難しいかもしれません。
本格的に運動することが、肥満の解消や予防に効果があるということは間違いのないことですが、それを始めることに高いハードルを感じるという人が多いのも確かなことです。
手軽に始められて、続けやすい運動、それが「歩く」ことです。
「歩く」ことの消費カロリー
「10,000歩」歩くと「約300キロカロリー」が消費されるといわれています。
これは、菓子パンなら1個分、ビールなら大ビン1本分に相当するカロリーです。
日本人は、平均して、一日に7,000歩ほど歩いているといわれているので、あと20分程度歩けば、一日に10,000歩歩くことができる計算になります。
歩くことで効率的にカロリーを消費するためには、「歩幅を大きくして、速足で歩く」ことが大切だといわれます。
だらだらと歩くのではなく、「ウォーキング」を意識してあるくようにすれば、しっかりと歩くことができます。
しっかりと歩けば、「基礎代謝」が高くなることも間違いありません。
基礎代謝
「基礎代謝」とは、一言でいえば「生命を維持するのに必要な消費エネルギー」といえます。
「呼吸」「心臓の鼓動」など、生命維持のために消費される根本的なエネルギーが基礎代謝です。
「基礎代謝が高い」ということは、「消費されるエネルギー量も多い」ということになります。
何もしなくても消費されるエネルギーが基礎代謝ですが、基礎代謝は、筋肉の量を増やすことで高くなるといわれているので、毎日しっかりと歩くなどして筋肉を鍛えていけば、必然的に日々の消費カロリーも増えていきます。
歩くことで、目に見えて筋肉が鍛えられて痩せていくというわけではありませんが、歩くことは筋肉を衰えないように維持して、さらに鍛えていくための基本です。
歩くことは、健康で過ごすための基本中の基本といえます。
歩かない暮らしをしていると、体のさまざまなところに歪みが生じてくるともいわれています。
生活はどんどん便利になっていって、歩かなければならないということは少なくなってきていますが、健康のためにも、意識的に歩くことを心がけたいです。