食欲は、生きていくために必要なエネルギーと栄養を摂るようにするための、大切な信号だといわれています。
この食欲をうまくコントロールして抑えることはできるのでしょうか。
満腹感と空腹感
お腹が一杯になったときに、「お腹が満たされた」とか「胃袋が満たされた」というような言い方をすることがありますが、実際には、胃袋が物理的に一杯になったときに満腹感を感じるというわけではないのだといいます。
胃袋の刺激のほかにも「血糖値の上昇」「咀嚼の信号」「脂肪細胞によって分泌されるレプチンの刺激」などが脳に伝えられて、「もう十分に食べた」という「満腹感」を感じるといいます。
この「満腹感」に比べて、「空腹感」はもっと複雑なようです。
「満腹感」がなくなることが「空腹感」につながるのは確かですが、食べたばかりなのに甘い物を食べたいと感じたり、逆に、集中している時にはお腹が空いていることを忘れてしまうこともあります。
緊張している時には感じなかった空腹感が、緊張がとけてホッとした時にお腹が空いていることを感じるということもありますが、これは、アドレナリンなどのホルモンが、空腹感を感じさせないようにしているためだといわれています。
空腹感は、身体に栄養やエネルギーが満たされているかどうかというだけではなく、いろいろな要素が関係しているといわれます。
その中の一つが、人の五感を刺激する「食べ物の情報」です。
・味覚 : 食べ物の味
・嗅覚 : 食べ物の匂い
・視覚 : 食べ物の見た目
・触覚 : 食べ物の食感
・聴覚 : 食べ物を料理する音など
台所で料理をする音が聞こえたり、美味しそうな匂いがしてくると、それまでは感じなかったのに急にお腹が空いたと感じることがあります。
それは、五感が食べ物から刺激を受けたからだといいます。
空腹感は、いろいろな要素の影響で感じたり感じなかったりする、意外と曖昧な感覚のようです。
曖昧な感覚なので、意識的に空腹感をコントロールすることも可能だといわれます。
この「空腹感のコントロール」が、うまく食欲を抑えることにつながるのだといいます。
「ホンモノの食欲」と「ニセモノの食欲」
食欲には「ホンモノの食欲」と「ニセモノの食欲」があるといわれています。
「ホンモノの食欲」は、生理的な食欲で、身体に必要なエネルギーや栄養を摂取するための大切な食欲ですが、「ニセモノの食欲」は、心理的なことが影響する食欲だといわれます。
「ホンモノの食欲」は「必要な食欲」、「ニセモノの食欲」は「贅沢な食欲」ともいえそうです。
ホンモノの食欲
「ホンモノの食欲」は、主に血糖値やレプチンというホルモンの影響で感じる食欲で、「栄養やエネルギーが不足しているから補給しなさい。」という脳からの信号を受けて感じる食欲だといいます。
「ホンモノの食欲」は、人が生きていくためには欠かすことのできないものです。
ニセモノの食欲
「ニセモノの食欲」は、生理的なものではなく、人の五感、記憶、感情、気持ちなどが影響して感じる食欲だといいます。
自分の好きなものや美味しいものを食べたときには、満たされた気持ちになって幸せを感じますが、そういう欲求を満たしたくて出てくる食欲が「ニセモノの食欲」というわけです。
ストレスによって生じる食欲もあるといいます。
イライラして食べたくなったり、心の隙間を埋めるためについ食べてしまうということもありますが、このような、いわゆる「ストレス食い」も「ニセモノの食欲」にあたるとされます。
肥満になってダイエットが必要になる人には、この「ニセモノの食欲」が旺盛なことが多いといわれます。
「美味しそうなものを見ると、つい食べたくなってしまう」「お菓子やスイーツを、つい食べ過ぎてしまう」「仕事が終わると、条件反射的に、お酒が飲みたくなる」「テレビを見ながら、ついおやつを食べてしまう」など、「ニセモノの食欲」のためにカロリーオーバーになってしまうことが多いといいます。
ニセモノの食欲を抑える
ダイエットを成功させるためには、「ニセモノの食欲を抑える」ことが重要になります。
そのためには、1日3回の食事できちんと「ホンモノの食欲」を満たすということが大切だといいます。
一方の「ニセモノの食欲」は、自分の身体が覚えてしまった贅沢な習慣によって起こる食欲です。
「ニセモノの食欲」を抑えても身体に悪影響を及ぼすことはなく、「ホンモノの食欲」での満腹感をしっかりと感じることができれば「ニセモノの食欲」を抑えやすくなるといわれます。
食べ物を見えないようにする
ニセモノの食欲には「五感」が大きく影響しているといわれます。
食べ物を見た時に、「美味しそう」という視覚からの刺激を受けて食べたくなることは少なくありません。
五感からの誘惑は結構強いので、なるべく食べ物を自分の五感に近づけないこと、特に「見えないようにする」ことは食欲を感じにくくするには効果的だといわれます。
食べ物が見えなければ、案外、食欲は湧いてこないものです。
特に、間食になるような食べ物は、買い置きをしないようにするのが良いようです。
余分な食べ物を買わない
買い物をしてると、つい余分に買ってしまうこともあります。
買い物に行く前に献立を決めて、必要な食材をメモしておいて、そこに書かれている物だけを買うようにすれば、余分な食べ物を買わなくて済みます。
余分な食べ物を買わなければ、つい食べてしまうということもなくなります。
食べ物が余ってしまっても、冷凍保存できるものなら、冷凍庫で凍らせてしまえばすぐに食べることができないので、食べたいと思っても心理的にブレーキがかかります。
少量の食べ物で満腹感を得る
「ホンモノの食欲」は、1日3回の栄養バランスのとれた食事で満たすことが大事ですが、その食事で食べ過ぎてしまうのは良くないので、少量の食事で満腹感を感じられるような食事の仕方を工夫することが大切だといわれます。
ゆっくりとよく噛んで、時間をかけて食べる
食事の際に大切なのは、ゆっくりとよく噛んで食べることだといいます。
食べ物を食べてから、脳の満腹中枢が刺激されるまでには、20~30分程度の時間が必要だといわれています。
早食いの人は、満腹感を感じる前にたくさん食べてしまうので、満腹感を感じた時にはすでに食べ過ぎの状態になってしまっているともいわれます。
噛むこと(咀嚼すること)も満腹中枢を刺激するので、一口で30回以上噛むことを目標にすると良いといわれます。
よく噛むことで、自然に食べる量も少なくなっていくようです。
食物繊維の多い野菜から食べる
食物繊維は胃の中で膨らみますが、胃が膨らむことも満腹中枢に届けられる信号になるといいます。
胃袋が一杯になれば満腹感を感じやすくなるので、食物繊維やビタミンなどが豊富な野菜を先に食べて、早く胃袋を満たすようにすると良いといわれます。
野菜を先に食べることは、満腹感の維持にも役立つといわれます。
ご飯を先に食べると、血糖値が急上昇してインスリンが多く分泌されますが、たくさんのインスリンが分泌されると血糖値が急降下してしまい、空腹感を感じやすくなってしまいます。
一方、野菜を先に食べておくと、胃や小腸で食物繊維がご飯などの糖質を包んで吸収を緩やかにしてくれるともいわれます。
このため、血糖値の上昇・下降が緩やかになって、空腹感を感じにくくなり腹持ちが良くなるというわけです。
食事中の水分補給
人は、体内の水分が減っても空腹感を感じるようになるといわれます。
水分補給は、満腹感を感じさせるということからも大切なことのようです。
食事の最初に、野菜と一緒に水を飲むと、野菜が胃の中で膨らみやすくなるという効果もあるといわれます。
食事中には、少なくともコップ1杯の水を飲むようにすると良さそうです。
食前の軽い運動
食事の前に軽い運動をすることも、満腹感を得るのに効果的だといわれます。
アドレナリンの働きで空腹感が和らぐから、というのがその理由のようです。
食事の前に、短時間(2~3分程度)軽く身体を動かすようすることで、満腹感が早く感じられるようになるともいわれます。