痩せるか太るかは、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが鍵を握っています。
摂取エネルギーは「食事」から摂取し、消費エネルギーは「運動」で消費しますが、痩せるためには、どちらをメインに考えれはばいいのでしょう。
摂取エネルギーと消費エネルギー
運動での消費カロリーは意外に少ない
お腹周りを1cm減らすためには、脂肪を約1kg減らす必要があるといわれますが、そのためには、7,200kcalを消費する必要があります。
フルマラソンを1回走った時に消費されるのが、2,400kcal程度といわれているので、お腹周りを1cm減らすためには、フルマラソンを3回走る必要があるということになります。
かなり大変です。
ショートケーキを1個食べると、その分のカロリーを消費するためには、30分程度のランニングが必要になり、かつ丼を1杯食べると、1時間30分程度のランニングが必要になるといわれています。
食べ物から摂取するエネルギーに比べると、運動で消費されるカロリーは、意外と少ないといえそうです。
痩せるためには食事をメインに
痩せるためには、「食事だけ」「運動だけ」というよりも、食事をメインにしながら、同時に運動も取り入れていくというスタンスがお勧めです。
摂取カロリーが少なければ、それだけ体重も早く減っていきます。
痩せるためには、どれ位のカロリーを摂取すれば良いのかということが気になるところですが、その時に忘れてはいけないのが、「健康的な肥満対策」ということです。
極端なカロリー制限をしてしまうと、健康を損ってしまうことにもなりかねないので、「健康的」ということを心がけることが大切です。
平均的な消費カロリー
1日の消費カロリーは、平均的な成人男性で2,600kcal程度、成人女性で2,000kcal程度といわれています。
このうち、何もしないでも消費される生命維持のためのエネルギーの「基礎代謝」が60~70%を占めるとされています。
健康的に痩せるためには、この基礎代謝のカロリー(成人男性1,700kcal程度、成人女性1,300kcal程度)を、1日の摂取カロリーの目安にすると良いといわれます。
生きるために必要な最低限のエネルギーを食事で摂る、といったイメージです。
摂取カロリーを減らす際にも、栄養バランスを考えながら、全体としてのカロリーを減らすということが大切になります。
健康的に痩せるには、三大栄養素をコンパクトに摂取
太るか太らないかは、摂取カロリーと消費カロリーのバランスで決まります。
どんなに運動をしたとしても、その消費カロリー以上のエネルギーを食事で摂っていると、適正な体重を維持することはできません。
まずは、現在の食事の量、食事の内容をチェックしてみましょう。
太り気味の人は、食べる量が多く、肉や揚げ物などが好きなことが多いです。
三大栄養素のバランスのよい摂取
「糖質(炭水化物):脂質:たんぱく質 = 60:25:15」
これが、通常、食事で摂取する三大栄養素のバランスが良い摂取割合とされています。
糖質の割合が、意外と高いことに驚く人が多いかもしれませんね。
痩せていく時には、たんぱく質を多めに摂取すると良いとされているので、その際には、たんぱく質の割合をもう少し高めにして「糖質(炭水化物):脂質:たんぱく質 = 60:20:20」程度を目安にするとよいかもしれません。
たんぱく質の摂取
肉は、良質のたんぱく質が豊富に含まれていて、貴重なたんぱく源になりますが、同時に脂質もたくさん含まれています。
脂質の摂り過ぎは、肥満には大敵です。
痩せていく際のたんぱく質の摂取に当たっては、含まれている脂質分のこともあり、牛肉よりも豚肉、豚肉よりも鶏肉の方が好ましいといわれています。
部位は、「バラ・ロース」より「もも・かた・ヒレ・ささみ」などの方が、脂質が少なくなります。
脂質が少ないという意味から、魚や大豆製品などからのたんぱく質の摂取は◎です。
調理
調理をする時は、「揚げる・炒める」よりも「蒸す・焼く・煮る」の方が、油を使わない分、脂質の摂取を抑えることができます。
炒める場合でも、テフロン加工のフライパンなどを使えば、油量を減らすことができます。
鯵(あじ)を「揚げる」か「焼く」か迷った時には、迷わず網で焼いて、余分な脂分を落として食べるようにしましょう。
おかずの味付けは、濃い味付けだと塩分などが多くなるだけではなく、ご飯の食べ過ぎにもつながるので、できるだけ薄味にするようにするといいです。
薄味で素材の味を活かした味付けにすることで、ゆっくりと味わって食べることにもつながります。
ゆっくり食べると、満腹感が得られやすくなるので、食べ過ぎの防止にもつながります。
総カロリーを抑える
「痩せる」というと「〇〇は食べない。」ということを連想するかもしれませんが、そうすることで栄養のバランスが崩れてしまっては良くありません。
必要な栄養はきちんと摂取しないと、健康的に継続していくことはできません。
バランスよく栄養を摂りながら、「総カロリー」を抑えるということがポイントです。
野菜、山菜、きのこ、海藻、魚、大豆製品を中心にした、昔ながらの「一汁一飯三菜」の和食を腹八分目に食べ、三大栄養素をコンパクトに摂って、健康的な食事を続けていきたいものです。
和食は海外でも注目されるダイエット食
世界的に肥満解消(ダイエット)に効果が高いとされる食事(健康に良いとされる食事)が二つあります。
一つは「地中海食」ですが、もう一つが「和食」です。
ダイエット食として評価が高い和食を毎日食べているはずの日本人に、ダイエットに悩んでいる人がたくさんいます。
つじつまが合わないような気もしますが、最近の日本では、食の欧米化が進んで、和食離れが進んでいるといわれています。
とても「もったいない」ことです。
「一汁一飯三菜」の和食スタイル
一言で和食といっても、具体的なイメージがわきにくいかもしれません。
健康的に痩せるのに良いとされる和食は、伝統的な「一汁一飯三菜」というスタイルの和食です。
一汁:味噌汁などの汁物
一飯:ご飯(できれば雑穀米や玄米の混ざったもの)
三菜:主菜、副菜、副々菜
「主菜」は、メインとなるおかずで、魚、肉、卵、大豆製品などを中心に、主に良質のたんぱく質・脂質の供給源になります。
「副菜」には、野菜、山菜、きのこなどを使って、ビタミンやミネラルなどの栄養素を補います。
「副々菜」には、口直しの香の物(漬物)などが添えられることが多いです。
肥満解消(ダイエット)の際には、主菜は魚や大豆製品を中心にするのがおすすめです。
肉は、良質のたんぱく質を摂取できますが、同時に脂質も多く摂取することになります。
ダイエット中は、肉はできるだけ、もも・かた・ささみなどの脂分の少ない部位を使うようにしたいです。
カロリーをほとんど気にする必要のない野菜は、食物繊維が多く含まれていて、糖の吸収を抑える働きをしてくれます。
ある程度の量を食べれば、満腹感も感じやすいので、その他の食事の量を抑えることもできます。
野菜は、痩せる上で、うってつけの食材といえます。
配膳
和食を配膳する際には、大皿に盛らずに、一人分ずつ分けて配膳するということもポイントになります。
大皿に盛ると、誰がどれだけ食べたかがわからない上に、食べたもの勝ち状態になり、ついつい食べ過ぎてしまうことが多くなってしまいます。
もう一つの配膳のポイントとして、食器は小さめで底の浅いものを使うようにしましょう。
小さめで底の浅い食器におかずなどを盛るように盛りつけて、見た目のボリューム感をアップし、皿数を多くすることによって、食卓の賑やかさをアップします。
ダイエット中は、全体の食事の量は減る傾向になるので、何となく見た感じが寂しくなることがあります。
それを見た目のボリューム感と賑やかさでカバーします。
しそ、パセリ、レモンなどを添えて彩の美しさを工夫すれば、なお良いです。
同じおかずの量でも、ボリューム感、賑やかさがかなり変わってきます。
伝統的な和食スタイルを意識して、野菜、山菜、きのこをたくさん食べるようにするだけでも、痩せる効果が期待できます。
痩せるには交感神経を活発に
人には、それぞれの行動のテンポがあります。
何をするのもテキパキと行動する人、何となく動きがスローでゆっくり行動する人など。
太っている人は、ゆっくりと行動する人が多いと感じたことはないでしょうか。
体が重いので行動がゆっくりになるということもあるかもしれませんが、この行動のテンポが、肥満に関係している面もあるようなのです。
交感神経
消費エネルギーのうちの60~70%は基礎代謝が占めていますが、この基礎代謝に大きく関係するのが「交感神経」と「副交感神経」です。
活発に行動している時や緊張している時などは、交感神経が優位に働いていますが、交感神経が優位に働くと、エネルギーを消費する方向に働くので、痩せる上では、好ましいことです。
周りを見渡してみて、ちょこまかと動き回る人や、行動のテンポが速い人などには、太っている人は少ないとは思いませんか。
交感神経に活発に働いてもらって、健康的に痩せていきましょう。
億劫がらずに動くようにして、行動するときには、意識的に少しテンポを上げてみるのもいいかもしれません。
副交感神経
交感神経は「起きている時の神経、緊張している時の神経」ですが、もう一方の副交感神経は「寝ている時の神経、リラックスしている時の神経」です。
副交感神経は、交感神経とは逆に、エネルギーを蓄積する方向に働きます。
特に、夜はこの副交感神経が優位に働くので、食事などをすると、そのエネルギーは蓄えられやすくなります。
夜遅くの食事や間食は、太りやすくなるので注意しましょう。
モナリザ症候群
米国のブレイ教授が「モナリザ症候群」を提唱しました。
「Most Obesity kNown Are Low In Sympathetic Activity」の頭文字をとったものですが、日本語にすると、「大多数の肥満者は、交感神経の働きが低下している。」という意味になります。
日中に活動的な生活をしていれば、交感神経も活発になり、エネルギーも消費しやすく太りにくい状態を保つことができるので、健康的に肥満を解消するには◎です。
しかし、動きの少ない不活発な生活を続けていると、交感神経の働きが鈍くなって、エネルギーが体脂肪となって蓄積されやすくなり、肥満の原因となってしまいます。
掃除、洗濯などをこまめにするのもいいですし、車で買い物に行っているのを、近くの場合なら自転車や徒歩に変えてみたり、また、スーパーでの買い物の際には、カートを使わずにカゴを手に持つのもいいかもしれません。
無理のない程度に活発な生活を心がけて、健康的に肥満を解消していきたいですね。
上手に痩せるための3要素
日本では、成人女性の約8割、男性の約7割がダイエットの経験があるといわれていますが、そのうちの7割以上の人がリバウンドにより、元の体重かそれ以上になってしまっているといわれています。
健康的に痩せるための3要素
体重が減って喜んだのもつかの間、努力も空しく元の体重に‥、というようなことにならないためにも、肥満対策を始める前に、その方法をチェックしておきましょう。
健康的に痩せるために重要な要素は、
・有効性
・安全性
・継続性
の3つです。
このうちの一つでも欠けると、一旦肥満を解消できても、その体型を健康的に維持することはできないといえます。
世の中には、「〇〇ダイエット」と称されるものがたくさんあります。
ほとんどのものは、その効果の多寡はあるとしても、何らかの効果はあるものです。
問題は、その方法を継続して行っても「安全」なのかということです。
言い換えれば、健康的にその方法を続けることができるかということです。
少し極端な例になりますが、「痩せるためには、リンゴダイエットが効果があると聞いたので、毎日リンゴだけを食べることにした。」としましょう。
おそらく、数日後には痩せるでしょうが、それをいつまでも続けると体に良くない(安全でない、健康的でない)ことは明らかです。
元の食事に戻した途端にリバウンド・・・ということになるでしょう。
一旦痩せることができても、その後リバウンドしてしまう最も大きな要因は、「継続性」のことをあまり考えていないということが挙げられます。
痩せるに当たっては、体重を減らすことはもちろん大切ですが、その減った体重をいかに健康的に維持していくかということが、とても大事になります。
「真の戦いは、体重が減った後に始まる。」といってもいいかもしれません。
短期決戦より長期持久戦といったところでしょうか。
健康的に減量していくには、ある程度の時間がかかるものです。
急激に体重が減ると、身体へのダメージが大きくなってしまいます。
また、お金が多くかかるものも継続性に問題がでてくるので、開始前に良く考えてみましょう。
安易な単品主義(~を飲むだけで痩せる、~を食べるだけで痩せる など)にとらわれずに、必要な栄養はしっかりと摂りながら、全体としての摂取カロリーを抑えて、健康的に痩せていくように心がけたいですね。
それには、「一汁一飯三菜」の和食スタイルがピッタリといえそうです。