秋の夜長に月見を楽しむ「中秋の名月」。
「中秋の名月=満月」というイメージが強いですが、実は、中秋の名月が満月であることはほとんどありません。
中秋の名月とは、いつ見られるどんな月のことなのでしょう。
中秋の名月
「中秋の名月」とは、旧暦の8月15日の夜に見られる月のことをいいます。
日本には四季があり、旧暦では、
・春→1月、2月、3月
・夏→4月、5月、6月
・秋→7月、8月、9月
・冬→10月、11月、12月
というように、3カ月毎に季節が変わっていきます。
そして、それぞれの季節の3つの月は、最初から順に「初、仲、晩」に分けられます。
1月は「春」の季節の「初」に当たるので「初春」
6月は「夏」の季節の「晩」に当たるので「晩夏」。
これによると、8月は「仲秋」ということになります。
一方、「15日」は、30日ある一月の真ん中の日で、「8月15日」は「秋の季節の真ん中の月」のさらに「真ん中の日」、つまり秋全体の真ん中の日なので、「8月15日」は「中秋」と呼ばれます。
「仲秋=8月」「中秋=8月15日」というわけです。
つまり
「仲秋の名月」→「8月の名月」
「中秋の名月」→「8月15日の名月」
になるというわけです。
中秋の名月は「十五夜」とも呼ばれるとおり、旧暦の8月15日の月のことを指すので、「ちゅうしゅうのめいげつ」といえば、一般的には「中秋の名月」が使われることが多いようです。
新暦での「中秋の名月」の日
「中秋の名月」は、旧暦では8月15日で決まっていますが、この日を新暦に換算すると、年によって全く別の日になります。
令和になってから(2019年以降)の「中秋の名月」の日は、次のようになります。
2019年:9月13日
2020年:10月1日
2021年:9月21日
2022年:9月10日
2023年:9月29日
2024年:9月17日
2025年:10月6日
2026年:9月25日
2027年:9月15日
2028年:10月3日
2029年:9月22日
それぞれの年によって、かなり日がづれています。
「中秋の名月」は「満月」とは限らない
「十五夜」とは、旧暦の毎月15日の満月の夜のことをいいますが、一般的に「十五夜」というと「旧暦の8月15日の夜」のことを指します。
この「十五夜」というのは「新月の日を1日目としたときの15日目の夜」ということですが、実際のところは、この日が満月になるとは限りません。
というより、「十五夜」が「満月」にならないことの方が多いというのです。
「満月の日」は「月が、ちょうど太陽の反対方向を通る日」で、「新月の日」は「月が、ちょうど太陽と同じ方向を通る日」ですが、「満月の日」も「新月の日」も、その日一日中が完全な満月や新月の状態であるというわけではありません。
その日のうちに、「ちょうど満月」となる瞬間、「ちょうど新月」となる瞬間があるのです。
「新月の瞬間」から「次の新月の瞬間」までの期間は「約29.5日」なので、「新月の瞬間」から「満月の瞬間」までの期間は「約14.8日」ということになります。
新月の瞬間となる日を含む日が、旧暦の1日となるので、新月の瞬間となる時刻が、午後11時というような遅い時刻だと、その時刻から14.8日後の満月になる時刻は、16日の午後6時頃ということになります。
この場合、満月の日は、15日ではなく16日となり、1日ずれてしまうというわけです。
さらに、月の軌道が楕円であることなどの様々な理由で「新月から満月まで」「満月から新月まで」の期間は微妙に違ってきます。
「新月から満月まで」の期間が長くなると、満月の日は、十五夜から二日ずれて「17日」になることもあります。
とはいっても、秋の真ん中の十五夜の中秋の名月は、満月ではなくても、情緒たっぷりに楽しみたいですね。
「中秋の名月の日」と「満月の日」
2019年:(中秋の名月)9月13日 (満月)9月14日 (ずれ)1日
2020年:(中秋の名月)10月1日 (満月)10月2日 (ずれ)1日
2021年:(中秋の名月)9月21日 (満月)9月21日 (ずれ)なし
2022年:(中秋の名月)9月10日 (満月)9月10日 (ずれ)なし
2023年:(中秋の名月)9月29日 (満月)9月29日 (ずれ)なし
2024年:(中秋の名月)9月17日 (満月)9月18日 (ずれ)1日
2025年:(中秋の名月)10月6日 (満月)10月7日 (ずれ)1日
2026年:(中秋の名月)9月25日 (満月)9月27日 (ずれ)2日
2027年:(中秋の名月)9月15日 (満月)9月16日 (ずれ)1日
2028年:(中秋の名月)10月3日 (満月)10月4日 (ずれ)1日
2029年:(中秋の名月)9月22日 (満月)9月23日 (ずれ)1日
2021年から2023年までは、「中秋の名月=満月」となっています。
「中秋の名月」のお供え物
中秋の名月の十五夜には、お供え物をして月見をしますが、何をお供えしたらいいのでしょうか。
月見団子
月見といえば「月見団子」のイメージが強いですが、どうして「団子」なのかといえば、それは、団子を満月に見立てて、健康や幸せを祈るという意味が込められているからだといわれています。
また、月見の時期は、米の収穫が始まる時期でもあるので、米で作った月見団子をお供えすることで、豊作を祈るという意味も込められているとされています。
団子の供え方
月見団子のお供えといえば、白木の台の上に、団子を山型に積んでいるというイメージがありますが、あの台は「三方」と呼ばれる、神道の神事などで使われるものです。
三方の上に、半紙などの白い紙を敷いて月見団子を乗せますが、三方がなければ、お盆や皿を代用しても差し支えないとされています。
供える団子の数
お供えする団子の数は、地域によって違いがあるようです。
一つは、十五夜にあわせて「15個」(下段に9個(3×3)、中段に4個(2×2)、上段に2個)供えるというもので、
もう一つが、「12個」(下段9個(3×3)、上段3個)、ただし、うるう年は「13個」(下段9個(3×3)、上段4個(2×2))供えるというものです。
「15個」は「十五夜」、「12個」は「その年の満月の数」という意味があるとされています。
「その年の満月の数」については、旧暦では、1年が13月となる「うるう年」があり、この年には満月の回数が13回になるので、13個の団子をお供えしていたといわれています。
地域によってお供えする団子の数が変わってくるので、自分が住んでいる地域ではどのように供えているのかを確認してみましょう。
すすき
中秋の名月のお供えには「すすき」がよく使われますが、すすき以外に、秋の七草(はぎ、すすき、ききょう、なでしこ、おみなえし、ふじばかま、くず)をお供えすることもあります。
本来なら、米の収穫を祈るため、「稲穂」をお供えするのが一番なのですが、この時期は、稲の収穫前なので、外見が似ているすすきを稲穂に見立ててお供えするようになったといわれています。
また、すすきは、茎の内部が空洞になっているため、神様の依り代(神様が宿る場所)になり、その鋭い切り口から、魔除けになるとも考えられていたといわれます。
さらに、すすきをお供えするのは、悪霊や災いなどから収穫物を守って、豊作を願うという意味が込められているといわれることもあります。
月見にお供えしたすすきは、捨てずに、庭や田んぼに立てたり、軒先に吊ったりして、家や田んぼを災いから守るという風習が残っている地域もありますが、月見では、すすきをお供えしないという地域もあります。
芋類(里芋、さつまいも など)
中秋の名月の十五夜は、別名「芋名月」とも呼ばれていて、里芋やさつまいもなどの芋類を供えるという習慣がある地域があります。
稲作が定着する以前の芋類を主食としていた時期には、中秋の名月の十五夜には、秋の収穫物である里芋などの芋類を供えていたとされています。
この名残りで、現在でも里芋などの芋類をお供えすることがあるのだそうです。
「十三夜」
8月15日の十五夜から約1ヶ月後の、旧暦の「9月13日」を「十三夜」や「後の月」といって、もう一度お月見をするという習慣もありました。
十三夜は、十五夜に次いで美しい月が見れるとされていて、十五夜に月見をしたら、必ず十三夜にも月見をしていたといいます。
十五夜と十三夜は「二夜の月」といわれるペアの行事で、どちから片方だけでしか月見をしないのは「片月見」と呼ばれて、縁起が悪いとされていたようです。
今でも、この風習が残っている地域もあります。
「八月十五日」
名字が「八月十五日」という人がいますが、何と読むのでしょう。
「八月十五日」と書いて「なかあき」と読みます。
「八月十五日=中秋=なかあき」というわけです。
昔は、八月十五日の月を「中秋の名月(なかあきのめいげつ)」と呼んでいたのが、後世になって「ちゅうしゅうのめいげつ」と呼ぶようになったともいわれています。