スーツの左襟にある「ボタンの穴」は、何のためにある?

スーツの左襟には、小さなボタンの穴(ボタンホール)があいていますが、右襟には、そのボタンホールに対応するようなボタンはついていません。

スーツの左襟のボタンホールは、何のためにあるのでしょう。

ラペルホール

スーツの襟は、二つの部分から成っていて、襟の上の部分は「カラー」、下の部分は「ラペル」と呼ばれますが、ボタンホールは、左襟のラペルの上の方にあいています。

左襟のボタンホールは、「ラペルにあるボタンホール」ということで、「ラペルホール」と呼ばれます。

この、ラペルホールには、社章をつけたりしている人もいますが、実際のところ、今では「単なる飾り」になっているといわれています。

しかし、以前には、この左襟のラペルホールにも、きちんとした「役目」がありました。

「ラペルホール」の役目

1850年頃に、イギリスで「ラウンジ・ジャケット」というジャケットが、流行したといわれます。

ラウンジ・ジャケットは、燕尾服などの長い裾を切り落とした、丈の短い略式のジャケットで、現在のスーツの「ルーツ」とされています

その、ラウンジ・ジャケットの襟の「左襟には、ラペルホール」「右襟の裏側には、ボタン」があり、寒い時には、襟を立てて、ボタンを留めて着ていたといわれています。

現在のスーツは、右襟の裏側に、ボタンはついていませんが、左襟のラペルホールは、当時の名残りで残っているというわけです。

別名「フラワーホール」

この「ラペルホール」は、別名「フラワーホール」とも呼ばれています。

20世紀の初めの頃には、このようなスーツを着るのは、上流階級の男性に限られていましたが、ディナーの際には、ラペルホールに花を差すのが、お洒落とされていたといわれます。

「花を差すホール」=「フラワーホール」というわけです。

現在でも、結婚式で、新郎が、タキシードの胸に、花嫁のブーケとお揃いの花を飾る、というスタイルがありますが、これも、もしかしたら、当時の名残りなのかもしれません。

~・~・~・~・~

ちなみに、スーツの袖口には、「2連」や「3連」のボタンだけが付いていますが、これも、元々は、袖をまくるために、実際に、開閉ができたボタンの名残りだといわれています。

「カフス」と呼ばれる袖口の部分は、現在では、ほとんどが開閉できない「開き見せ」となっていますが、「本開き」や「本切羽」という、開閉できるタイプのスーツも残っています。