「開けゴマ!」は、どうして「ゴマ」?その由来と意味は?

開く門

「開けゴマ!」は、障害を取り除いて道を拓く際に唱える呪文です。
 
子供がドアを開けたり、窓を開けたりする前に、遊び感覚で唱えるのを見かけることもあります。
 
「開けゴマ」は、大人から子供まで、多くの人がよく知っているフレーズですが、どうして「ゴマ」なのでしょうか。

「開けゴマ」

「開けゴマ!」という呪文は、「アラビアンナイト(千夜一夜物語)」の中の「アリババと四十人の盗賊」という物語に由来しています。
 
「アラビアンナイト」は、ペルシャ王の妻が、王に毎夜物語を語るという形式の説話物語集です。
 
その代表的な物語に「アラジンと魔法のランプ」「シンドバッドの冒険」などがありますが、「アリババと四十人の盗賊」もその中の一つの物語です。

アリババと四十人の盗賊

「開けゴマ!」の由来となる「アリババと四十人の盗賊」の大まかなあらすじは、次のとおりです。

「アリババと四十人の盗賊」のあらすじ
 
ペルシャに、貧乏だけれども真面目で働き者のアリババという男の人がいました。

ある日、アリババがロバを連れて歩いていると、盗賊たちが財宝を洞窟に隠そうとしているのを目撃します。

盗賊たちは、「開けゴマ!」という呪文を唱えて洞窟の岩の扉を開け、中に入っていきました。

しばらくして出てくると、今度は「閉じろゴマ!」という呪文を唱え、扉を閉めて立ち去っていきました。

これを見ていたアリババは、同じように呪文を唱えて扉を開けて中に入っていき、そこにあったたくさんの財宝を集めて持ち帰り、大金持ちになりました。

アリババは、このことを妻にしか知らせず、ほかの誰にも分からないようにしていました。

しかし、アリババの兄に知られてしまいます。

兄はアリババから呪文を聞き出し、「開けゴマ!」という呪文を唱えて岩の扉を開けて洞窟に入り、「閉じろゴマ!」という呪文を唱えて岩の扉を閉めた後、財宝をセッセと集めました。

財宝を集め終わって、扉を開けようとしますが、呪文を忘れてしまいます。

「開けマメ!」「開けムギ!」「開けカボチャ!」など、いろいろ唱えてみますが、扉は開きません。

そこに盗賊たちが戻ってきて、兄は盗賊たちに殺されてしまいました。

その後、盗賊たちは、アリババが財宝を盗んだことを知り、アリババを殺そうとしますが、兄に仕えていた召し使いのモルジアナの機転の利いた活躍で撃退されてしまいます。

兄の召使いだったモルジアナは、アリババの養子になっていた兄の息子の妻となり、アリババ一家は幸せに暮らしていきました。

どうして「ゴマ」?

「開けゴマ」という呪文は、物語の原語のアラビア語では「iftah ya simsim(イフタフ ヤー シムシム)」となるといいます。
 
それぞれの単語の意味は「iftah:開け」「ya:さあ(感動詞)」「simsim:ゴマ」となります。
 
扉を開ける際の呪文は、各国の言語でも表現されていますが、やはり「ゴマ」のです。
 
英語:Open sesame
フランス語:Sésame ouvert
ドイツ語:Sesam öffnen
スペイン語:Sésamo abierto
 
「開けゴマ!」は、アリババが洞窟の扉を開けるために使った「呪文」ということで有名になりました。
 
物語の流れから、閉まっている扉に向かって「開け!」と言っているように思われますが、実際に言った言葉は「開け扉!」ではなく「開けゴマ!」です。
 
言葉上は、「ゴマ」に対して開けと言っていて、意味としては「ゴマよ、開け」という意味になります。
 
この呪文に、どうして「ゴマ」が用いられたのか、はっきりとした由来はわかっていないようですが、その理由として考えられている、いくつかの説があります。

「ゴマは貴重なものだったから」という説

アラビアを始めとした中東の地域では、ゴマはとても貴重な食材でした。

このため、貴重なゴマを財宝や宝物に見立てたのではないかという説です。

「ゴマという言葉に霊力があると考えられていたから」という説

アラビア語で「ゴマ」という意味の語は「simsim」。

「sim」には「毒」という意味があり、「simsim」は、この「sim」が重なっていて、言葉そのものに霊力が宿っていると考えられたからではないかという説です。

「ゴマには神秘的な力が宿っていると考えられていたから」という説

当時、ゴマは単なる食材としてだけでなく、油を取ったり、化粧品に使われたりしていて、その上、香りが良かったこともあり、ゴマに不思議な力を感じていたといいます。

ゴマ油が魔術に使われることもあり、ゴマには神秘的な力が宿っていると考えられていたからではないかという説です。

「ゴマのさやが割れる様子に見立てた」という説

ゴマは乾燥に強いため、中東では常に保存されている貴重な食材でした。

ゴマは、房に包まれて実っていきますが、収穫の時期には、その房が開きます。

この、ゴマが熟して、房が割れてはじける様子を、扉が開くことに見立てたのではないかという説です。

まとめ

実際のところ、扉を開ける際に「開けゴマ!」という呪文を唱えるようにした理由については、今となっては「この物語の作者のみぞ知る」というほかありません。
 
ただ、当時、実際のゴマが貴重な食材というだけではなく、ゴマに対して神秘的というイメージがあったことが、この呪文に「ゴマ」が使われた一因になっている可能性が高いように感じます。
 
「扉の向こう側にある「ゴマのように」貴重な財宝を得るため、「ゴマのような」神秘的な力で閉まっている扉を開けてほしい」という思いを込めて「開けゴマ!」という呪文を唱えた、というところでしょうか・・・。