スリッパは日本発祥の履物!

スリッパ

スリッパは、日本人にとって、欠かすことのできない身近な履物です。

スリッパは、主に、家の中の「板の間」や「廊下」などで履いて、「畳の部屋」などに入る時には脱ぐ、という使い方をするのが一般的です。

家の中でスリッパを使うのは、日本人の生活スタイルが、洋風化した証ともいえますが、実は、このスリッパは、外国から伝わってきたものではなく、日本で生まれた履物だといわれます。

屋内でも靴を脱がない西洋人

「スリッパ」は、明治のはじめに、徳野利三郎という仕立て人が考案した履物だといわれています。

明治に入ると、多くの西洋人が日本にやってくるようになりますが、彼らには、屋内で靴を脱ぐという習慣がなかったので、靴を履いたまま、畳の部屋に入ろうとします。

当時は、まだ西洋式のホテルは少なく、西洋人も旅館やお寺などに泊まっていましたが、靴を履いたまま部屋に入ろうとするので、トラブルになることも少なくなかったのだといいます。

この状況を改善させたのが、スリッパです。

西洋人向けに考案された「スリッパ」

徳野氏が「スリッパ」を作るきっかけとなったのは、「旅館やお寺から相談を受けたから」という説と、「西洋人自らが徳野氏にオーダーした」という説がありますが、いずれにしても、徳野氏は工夫を重ねて、1868年に、現在の「スリッパ」に近い形状の履物を作り上げました。

徳野氏が考案した「スリッパ」は、甲は、ピロードやラシャ、台は、古い畳表を2~3枚重ねて和紙で補強し、外底には、帆布を使った、履きやすくて丈夫な「スリッパ」だったといわれています。

当時の西洋人は、この「スリッパ」を直接足に履くのではなく、靴の上から履いて、部屋を汚さないようにしていたといわれています。

この履物が、次第に、家庭や公共の場でも使われるようになっていき、現在に至っているというわけです。

スリッパの語源

徳野氏が「スリッパ」を作ったのが、1868年ですが、その前年の1867年には、福沢諭吉の著書「西洋衣食住」で、「上沓」「スリップルス」と併記されていて、
西洋人が家の中で上草履のように使う、ひも靴に近い履物が「スリップルス」と紹介されています。

「スリッパ」の語源となっているとされる「スリッパー(slipper)」は、「slip(滑る)」に接尾語のついた名詞で、足を滑らせて履くことのできる、紐や留め金のない履物全般のことをいいます。

「スリッパー」は、日本の「スリッパ」のような室内履きのものから、ミュールやパンプスまでをひっくるめた履物のことを指しているというわけです。

日本独特の「スリッパ」は、形状としては、英語でいう「ミュール」に近い履物といえるのかもしれません。