いざ、何かを始めようとした時、気合を入れて、指をポキポキと鳴らす人がいます。
気持ちはよく伝わってきますが、この指のポキポキを続けていると、指が太くなるともいわれています。
無意識のうちにポキポキと鳴らす人もいるようですが、華奢な手を保ちたいと思っている人にしてみれば、本当に指が太くなってしまっては大ショックです。
指がポキポキ鳴るメカニズムとはどのようなもので、指が太くなるというのは、本当なのでしょうか。
また、指をポキポキ鳴らすことで、体への悪影響はないのでしょうか。
指のポキポキ
指などの関節がポキポキ鳴るのは、「キャビテーション」と呼ばれる空洞現象からくるものだといわれています。
キャビテーションとは、液体の中に生じた気泡が弾ける現象のことで、湯ぶねの中をグルグルと手でかき混ぜると、いくつもの気泡が生じてパチパチ弾けるような現象のことです。
指がポキポキ鳴る音は、関節の間にある関節液が弾けた時の音だといわれています。
指の関節
骨と骨が連結した部分が「関節」です。
関節があることで、指、腕、脚を曲げたり、複雑な動作をしたりするすることができます。
関節の内部は、「関節包」と呼ばれる袋状の細胞に包まれてますが、その関節包の内部は、「関節液」で満たされているので、関節を円滑に動かすことができます。
この関節包と関節液が作用して、音が鳴るといわれています。
全ての関節には、関節包と関節液が存在するので、基本的には、どこの関節でも同じ原理で音を鳴らすことができます。
キャビテーション
「キャビテーション」とは、液体の中に生じた気泡が弾ける現象のことです。
体を動かしていると、代謝の影響もあって、関節包の中には自然に「気泡(空気)」が溜まっていくといわれています。
指を引っ張るなど、関節に刺激が加わると、関節液の圧力が一時的に下がりますが、その下がった圧力を戻そうとして、関節液が一気に関節の間へと流れ込みます。
音が鳴る原因
この時、キャビテーションが起こり、気泡がパチンと弾ける音が骨に反響して、「ポキポキ」という音がするといわれています。
キャビテーションで気泡が弾ける瞬間には、約1トン、気圧にして約1000気圧もの力が働くといわれています。
船のスクリューでもキャビテーションが起こり、次第に虫に食われたように浸食されていきますが、キャビテーションは、スクリューのような鉄板でも貫いてしまう力を持っているのです。
これが関節内で起こると、同じように周りの「骨」が浸食されていきます。
ポキポキと音が鳴る瞬間は、同時に、骨にダメージが与えられる瞬間でもあるわけです。
指が太くなる理由
関節内で起こるキャビテーションも、1回や2回くらいなら、たいした影響はないかもしれませんが、繰り返し起こると船のスクリューのように次第に骨が浸食されていきます。
骨が浸食され傷つくと、それを修復するために、人間の体は、傷ついた箇所を塗り固めて、さらに強くしようとするといわれています。
これらのことが繰り返されることで、指の関節が次第に太くなっていくというわけです。
・指をポキポキ鳴らそうとする(指を引っ張る)
↓
・関節液が弾ける
↓
・周りの骨がダメージをうける
↓
・その部分を修復する
↓
・以前より太く丈夫になる
続けて鳴らすことはできない
指をポキポキと鳴らした後、もう一度鳴らそうとしても、すぐには鳴らすことができません。
これは、音の原因となる気泡が、元の状態に戻るまでには時間がかかるからだとされています。
指を鳴らしている人の感覚では、1時間程度経てば、また関節が鳴らせるようになることが多いようです。
老化とともに鳴りにくくなる
長期間、指を鳴らし続けていると、次第に鳴りやすくなっていきます。
ポキポキと気持ちよく音を鳴らせるようになり、痛みも感じなくなっていき、指を鳴らした後は、何となくスッキリとした感覚になる人も多いといいます。
40代くらいまでは、それまでと同じように鳴り続けますが、50代に差しかかると、音が鳴りにくくなっていくといいます。
老化によって、関節軟骨などの水分量が少なくなったり、靭帯などが固くなったりすることによって、次第に関節の柔軟性が無くなっていくことが原因で、音が鳴りにくくなるといわれています。
年齢を重ねると、指は鳴らしにくくなるというわけです。
体への悪影響
指をポキポキと鳴らしていると、「指が太くなる」という以外にも、体への悪影響が心配されます。
指を鳴らす癖がある人は、注意が必要です。
握力の低下
指をポキポキ鳴らしていると、軟骨や靭帯が傷ついて、「握力が低下」するという研究結果があります。
この研究は、長期的に見た場合の結果なので、指を鳴らす癖があったとしても、若い時には実感として感じられないことが多いかもしれません。
また、握力が強い人は、他の要因も絡んで握力が強いことが多いので、指を鳴らしたことだけが原因となって、握力が低下することはないのかもしれません。
しかし、軟骨や靭帯が傷つきやすいということは間違いがないことのようなので、むやみに指を鳴らすのは避けた方が良さそうです。
関節炎
指をポキポキと鳴らすと、関節に負荷がかかるということは間違いありません。
鳴らす際に軟骨が磨り減って、「関節炎」を起こすという可能性も否定できません。
指をポキポキと鳴らすことと関節炎との関係は、はっきりとしたことは分かっていないようですが、「長期的に見ると、人体に悪影響を及ぼしかねない」と考えられています。
特に、関節を鳴らした際に痛みを伴う場合は、要注意です。
一度、専門医に診てもらった方がいいかもしれません。
指を鳴らすことに警鐘を鳴らす専門家も多いので、関節炎との因果関係がはっきりとはしているわけではありませんが、できるだけ鳴らさないようにした方が良さそうです。
指を鳴らす癖は止められない?
指をポキポキと鳴らす癖がある人が、それを止められないのは、「ストレッチ効果」があるからというのが、有力な説です。
活動していると、疲労物質が溜まって、筋や靱帯の柔軟性が失われてきます。
その際、強い力で関節を引き伸ばすと、組織のストレッチとなり、柔軟性の改善や血流の改善など「ストレッチ効果」が得られるといいます。
その時に「ポキッ」という音がすると「この音で状態が改善された」と脳が判断し、それが快感となって癖になっていくというのです。
キャビテーションによってダメージをうける関節軟骨には神経や血管がないので、そのダメージによる痛みを感覚としてとらえることができません。
キャビテーションによってどんどんダメージをうける関節内部の組織の浸食には気づかず、「ストレッチ+音」によって快感がフィードバックされてしまうことで、止められなくなってしまうというのです。
しかし、実際には、関節内の組織はダメージをうけています。
指を鳴らし続けると
指をポキポキ鳴らすのが癖になると、最初のうちは大きく動かさないと鳴らなかった関節も、少し動かすだけで鳴るようになってきます。
これは、関節が緩んできているからです。
関節を支えている靱帯が、繰り返すストレッチで伸ばされてしまっているのです。
こういう状態になると、少しの加減で、ポキポキとキャビテーションが起きてしまうことになります。
指を少し動かすだけでポキポキとなるのは、関節が緩んできている証拠です。
指を鳴らすのを止めるには
指を鳴らす癖を治すには、まずは「止める」と決意しましょう。
軽い癖なら、2週間も我慢すれば鳴らさなくなります。
もし、ムズムズして鳴らしたくなってきたら、指が鳴らない程度にゆっくりと伸ばしてみましょう。
指を伸ばすことで、ストレッチ効果が得られ、ひとまずは欲求が満たされるはずです。
快感を得ているのは、音が鳴ることではなく、指を伸ばすというストレッチ効果です。
「音が鳴る」というのは「骨へダメージ」を与えているだけです。
このことが理解できていれば、ポキポキと音を鳴らしたくなることもなくなるでしょう。
まとめ
指をポキポキ鳴らすと気持ちいいですが、体には良い影響がありません。
ポキッと音が鳴ること自体に快感を感じているようにも思いますが、本来快感を感じているのはストレッチ効果に対してです。
ポキッと言う音に快感を感じるというのは、「脳の勘違い」です。
脳の誤解が解ければ、指を鳴らすのを止めるのも、そんなに難しくないかもしれません。
これまでの癖で、つい指を鳴らしてしまうということもあるかもしれませんが、体への悪影響のことを考えると、できるだけ早く、指は鳴らさないようにしたいですね。