昔から「へそのごまをいじるとお腹が痛くなるから、さわってはダメ」と、よく言われます。
こう言われるので、気になって取りたくなっても、お腹が痛くなったらいやだからやめておこうと、取らずにそのままにしている人もいるのではないでしょうか。
見た目が黒ごまに似ているということから「へそのごま」と呼ばれていますが、この「へそのごま」とは、一体何なのでしょうか。
取らずにそのままにしておいても、体に悪い影響はないのでしょうか。
へそのごま
へそのごまの正体
「へそのごま」の正体を一言で言うと「へそにたまった垢」です。
垢、皮脂、ほこり、汗などが、へその中で入り混じって固まり、黒いごま粒のようになったものが「へそのごま」です。
へそのごまには、1g中に約120万個もの菌が潜んでいるともいわれています。
トイレの便器の水にいる細菌の数が300個/g前後だといわれているので、約4,100倍の菌がいることになります。
ただ、へそのごまに含まれている菌には、無害な菌も多く、中には体に有益な菌も含まれているようなので、便器よりも不潔というわけではなさそうですが・・・。
とはいっても、体温や汗などで蒸れやすいへその中が、雑菌が繁殖しやすい場所であるということは容易に想像できます。
へその汚れはたまりやすい
へそは、くぼんでいて皮膚にもしわがあるために、汚れがたまりやすく、普通に体を洗っていても、へその中まではきれいに洗えていないことが多いので、汚れがどんどん蓄積されていきやすいです。
また、へその中は見えにくいので、へそが汚れていたり、ごまがたまっていたりしても、なかなか気づきにくく、そのまま放置していると、へそのごまはどんどん大きくなっていきます。
長い間へそのごまを放置していると、カチカチに固まった大きな塊になってしまうこともあるといいます。
へそのごまは掃除しても大丈夫
「へそのごまをいじるとお腹が痛くなるから、さわってはダメ」と言われて育った人の中には、へその掃除は絶対にしないという人もいるようです。
しかし、へそのごまは「へそにたまった垢」なので、きれいに掃除をした方が良いともいわれています。
ただし、「いじり過ぎ」は禁物ですが。
「へそのごまをいじるとお腹が痛くなるから、さわってはダメ」ということからも分かるように、へそのごまをとってはダメと言っているわけではありません。
お腹が痛くなるから、「へそをいじってはダメ」だといっているのです。
へその下にある腹膜の神経はとても敏感で、へそをいじった刺激で、周辺にシクシクとした腹痛を起こしやすいといわれています。
できるだけ刺激を与えないように、やさしくへそのごまを掃除しましょう。
へそをいじり過ぎるのは良くありませんが、衛生のためには、たまったへそのごまは掃除をして取り除くことも大切です。
へその手入れ
たまったへそのごまを取り除くことも大切ですが、一番良いのは、へそのごまがたまらないように、普段からへそを清潔にしておくことです。
へそは、その形状からして、汚れがたまりやすい場所なので、何も手入れをしなければ、すぐにへそのごまがたまっていきます。
普段からへそを清潔に保つように心がけましょう。
風呂でへそを洗う
普段のへその汚れを取り除く一番簡単な方法は、風呂に入って体を洗う時に「へそも一緒に洗う」ということです。
風呂に入っている時は、垢が水分を吸収してふやけた状態になって落としやすくなっているので、へその手入れには最適です。
石けんを含ませたタオルを指に巻いてへそに軽く突っ込み、2~3回まわすだけ。
へその皮膚は薄くてデリケートなので、ごしごし擦るのではなく、やさしく拭き取るようにするのがポイントです。
タオルは、ナイロンよりも綿の方が、皮膚にやさしいです。
週1~2回くらい、こうやって洗っておけば、汚れがごまになってたまっていくこともなく、きれいなへそを保つことができそうです。
へそのごまの掃除
へその中に垢がたまって「ごま」になり始めたら、タオルでは拭き取りにくくなってきます。
こんな時には、「綿棒」と「オリーブオイル(またはベビーオイル)」を使えば、比較的簡単に取り除くことができます。
入浴後のへそのごまがふやけている時に、綿棒にオリーブオイルを浸して、やさしく拭き取りましょう。
ごまが固くなって取れにくい時には、少量のオリーブオイルをごまにしみ込ませた後に拭き取ると、取れやすくなります。
ごまが固くなっていると、なかなか取れないこともありますが、意地になって強くこすり過ぎると、炎症を起こしてしまうこともあります。
へその掃除をしている時に、皮膚がヒリヒリしたりお腹が痛くなったりしたら、ごまが残っていても、すぐに止めましょう。
あまり無理をせず、1週間くらいの期間をあけて、少しずつ取っていくのがポイントです。
妊娠してお腹が大きくなった妊婦さんは、へそが開いてくぼみがなくなってくるので、今までへその奥にあって見えなかったようなごまも見えてきます。
へそのごまも取りやすい状態になっているので、お腹が大きくなった時は、へその掃除をするにはチャンスです。
へそのごまが取れない場合は皮膚科へ
大きく固くなったへそのごまは「臍石(さいせき)」と呼ばれて、自分で取り除くのは難しくなります。
臍石は、へそのごまが石のように固くなった状態で、皮膚にこびりついているので、簡単に取ることはできません。
無理をして取ろうとして、へそをいじり過ぎると、炎症や腹痛を起こしてしまうこともあるといいます。
へそのごまが取れない時には、皮膚科で診てもらうようにしましょう。
へそのごまがたまりやすい人
その人の特徴によって、へそのごまがたまりやすい人と、そうでない人がいます。
へそのごまがたまりやすい人の特徴は、次のとおりです。
へそが深い人
へそが深い人は、風呂に入って体を洗っても、へその深くまできれいに洗うことが難しく、垢や皮脂がたまりやすいです。
きちんと手入れをしているつもりでも、へその奥まで行き届いていない可能性もあります。
体型が太め人も、お腹の脂肪が邪魔になって、へその奥まで手入れがしづらいということもあります。
汗かきの人
汗によって流れていった皮脂が、そのままへその中に入り込んで、へそのごまになってしまいます。
汗の量が多い人ほど、へそのごまが作られやすいというわけです。
子供は、大人に比べて汗をよくかくという特徴があるので、小さい子供がいる家庭では注意して見てあげましょう。
毛深い人
へその周りの体毛を不潔にしていると、細菌が繁殖しやすくなります。
細菌をそのままにしていると、炎症の原因になることもあるので、清潔を保つようにしましょう。
へそのごまと病気
へそのごまは「へそにたまった垢」なので、へそのごま自体は、特に害があるというわけではありませんが、へそのごまをためるのは、体にとっては、あまり良いことではありません。
臍炎(さいえん)
へそにごまがたまっていき、固くなった「臍石」の状態になると、へその皮膚に傷がつきやすくなり、そこからごまの雑菌が入っていき「臍炎」を起こしやすくなるといいます。
臍炎は、へその緒を切ったばかりの新生児がよく発症する病気ですが、大人でも雑菌に感染して発症することがあります。
臍炎では、「湿疹」「腫れ」「かゆみ」「痛み」「化膿」などの症状が現れますが、それらの症状が出たり消えたりしていくうちに、慢性化して悪化していくといわれています。
へそのごまから強い悪臭がする場合は、臍炎が原因になっていることもあるといいます。
へそに炎症などの異常を感じたら、すぐに皮膚科を受診するようにしましょう。
内膜炎(臍周囲炎)
頻度としては少ないようですが、へその炎症が腹部内膜にまで達してしまい「内膜炎」を起こすことがあるといいます。
悪化すると、敗血症を起こして死に至る可能性もある、恐ろしい病気です。
ただ、一気に内膜炎になることはなく、患部を衛生に保つことができず、臍炎を繰り返し発症している場合の最終形がこの病気だといわれています。
臍炎の段階で、医師の指示に従って、患部の清潔を徹底することが大切です。
まとめ
へそは、胎児と母親の胎盤を結んでいた臍帯の名残りで、胎児が体内にいる時には、とても重要な役割がありましたが、胎児が生まれてしまった後は、特に何らかの役目を果たしているというわけではありません。
普段は、あまり手入れもしないことが多い「へそ」ですが、手入れをしていないと、時には病気を引き起こすことがあるということも覚えておきましょう。
これまでは「へそのごまをいじるとお腹が痛くなるから、さわってはダメ」という教えを守って、へその掃除をしていなかった人も、これを機会に「へその手入れ」を始めるのもいいかもしれませんね。