耳掃除をしていて、耳垢がごっそりとれた時は、何ともいえない快感を味わうことができます。
頻繁に耳掃除をしていると、大きな耳垢がとれることは少なくなりますが、耳掃除自体が気持ちがいいので、毎日の習慣で耳掃除をしているという人もいるようです。
耳掃除に限らず、どんなことでも、やり過ぎたり、間違った方法でしたりするのは良いことではありません。
耳の中はデリケートになっているので、むやみに耳掃除をしていると、耳にトラブルが起きてしまうこともあります。
耳掃除は、単純で簡単な作業なので、深く考えずに行っていることがほとんどだと思いますが、耳のトラブルを避けるためにも、正しいやり方で、安全に耳掃除をするようにしましょう。
耳垢
「耳垢」と書くと、医学用語としては「みみあか」ではなく「じこう」と呼ばれます。
「みみあか」と聞くと不潔で不要なものというイメージが浮かぶかもしれませんが、耳垢は、外耳道を清潔に保つためのものだという説があります。
この説によれば、耳垢は、ほこりや汚れから鼓膜を保護するだけではなく、抗菌性をもっていて、外耳道の表面も保護しているというのです。
耳垢は、外耳道の耳の入り口に近いところにだけできるので、食事をしたりしゃべったりして、顎を動かせば、古くなった耳垢は、自然に外に出ていくので、基本的には、頻繁に耳掃除をする必要はないといわれています。
耳垢の種類
「耳垢」は、外耳道にある「耳垢腺(じこうせん)」や「皮脂腺(ひしせん)」から出る分泌物と、「垢」や「ほこり」などとが混ざってできたものだといわれています。
耳垢は、カサカサと乾いた「乾性耳垢」と、ベトベトと湿った「湿性耳垢」の2種類に分けることができます。
乾性耳垢
「乾性耳垢」は、ミミアカ、ミミクソ、ミミカス、コナミミなどとも呼ばれる、カサカサと乾燥した灰白色のウロコのような耳垢です。
カサカサしているのは、耳垢腺からの油脂成分の分泌が少ないためで、乾性耳垢に含まれる油脂成分は、およそ20%程度といわれています。
日本人の約7割に、この「乾性耳垢」が見られるといわれています。
湿性耳垢
一方の「湿性耳垢」は、アメミミ、ヤニミミ、ネコミミ、ジュルミミなどとも呼ばれる、ベトベトと湿った褐色の耳垢です。
耳垢腺からの油脂成分の分泌が多くなると、ベトベトした耳垢となりますが、湿性耳垢に含まれる油脂成分は、約50%を占めるといわれています。
西欧人の約9割に、この「湿性耳垢」が見られるといわれています。
耳垢腺の数が多いと湿性耳垢が多くなることが分かっていて、耳垢が乾いているか湿っているかの違いは、主に耳垢腺からの分泌量の差によるものだと考えられています。
耳垢栓塞
耳垢がたまりすぎてしまうと、「耳垢栓塞(じこうせんそく)」という病気になってしまうことがあります。
耳垢栓塞では、耳垢が外耳道に詰まったような状態になっていて、耳垢の厚みが1cmくらいになると、聞こえが少し悪くなり、耳垢が鼓膜につくと、耳鳴りや難聴といった症状が現れるといわれています。
耳垢栓塞の原因には、「耳掃除のし過ぎによる耳垢の過剰分泌」「耳掃除で耳垢を奥に押し込んでしまった」「湿疹などの皮膚疾患」などが考えられています。
耳垢栓塞になると、自分で耳垢を取り除くのは難しくなるので、耳鼻科を受診して取り除いてもらいましょう。
耳掃除
耳垢には、外耳道を保護する働きがあるので、耳掃除をする際には、「耳垢をためすぎない」「耳垢を取りすぎない」「耳の中を傷つけない」ということがポイントになります。
「耳かき」「綿棒」どちらを使う
耳掃除といえば「耳かき」と「綿棒」が思い浮かびますが、どちらを使って耳掃除をするのが良いのでしょうか。
一般的には、乾性の耳垢の場合には「耳かき」を、湿性の耳垢の場合は「綿棒」を使うとよいといわれています。
ただ、耳かきは綿棒に比べて、耳の皮膚を傷つけやすいので、安全性ということから言えば、綿棒の方がより安全といえそうです。
また、耳かきや綿棒などの耳掃除に使う道具は、できるだけ清潔なところに置くようにしましょう。
道具が汚れていると、耳掃除をしている際にできた傷から菌が入ってしまい、思わぬトラブルを起こしてしまうこともあります。
耳掃除のやり方
耳掃除の際に、耳かきや綿棒を耳の奥深くまで入れると、鼓膜をつっついて痛い思いをすることがあります。
そんなに奥まで耳掃除をする必要はありません。
耳かきや綿棒をつっこみ過ぎると、かえって耳垢を奥へ押し込めてしまうこともあります。
耳掃除のやり方は、「耳の入り口から1cm程度」のところまでを、やさしく耳かきや綿棒でこする程度で十分だといわれています。
綿棒なら、クルッと回転させる程度で、強く押し付けてこすらないように。
無理に奥の方まで掃除をしたり、力を入れてこすったりすると、耳の皮膚に傷をつけたり、鼓膜を破ってしまったりすることにもなりかねません。
また、耳かきや綿棒以外のものでは、耳掃除をしないようにした方が無難です。
特に、爪で耳掃除をすると、外耳に傷をつけて外耳炎になりやすいといわれているので、十分に注意しましょう。
耳掃除の際の姿勢
耳掃除というと、膝枕で横になって、人に掃除をしてもらうということもありますが、横になった姿勢で耳掃除をすると、特に乾性の耳垢の場合には、取り切れなかった耳垢が、どんどん耳の奥に入っていってしまいます。
座った姿勢なら、耳垢が取り切れなくても、耳の奥に入り込んでいくということはあまりないので、耳掃除は、起き上がった姿勢でするようにしましょう。
綿棒を湿らせる
普通に耳掃除をしても、すっきりと耳垢がとれないと感じた時は、綿棒を「ベビーオイル」や「オリーブオイル」などで湿らせると、耳垢を吸着して取り除きやすくなります。
乾性の耳垢の場合は、耳掃除をしていると、耳垢がどんどん奥に入り込んでいくことがありますが、粘着性のある湿った綿棒を使うことで、パラパラの耳垢をキャッチしやすくなります。
また、湿性の耳垢の場合は、耳垢に粘りがあって皮膚にべったりと付いていることが多いですが、こちらも、湿った綿棒を使うことで、耳垢を吸着して取り除きやすくなります。
耳掃除の頻度
耳垢は、そんなに急にたまるものではないので、耳掃除は「2週間に1回程度」すれば十分だといわれています。
それ以上やり過ぎると、かえって耳に悪影響を与えやすくなるといいます。
気持ちがいいからなどの理由で、毎日のように耳掃除をしている場合には、頻度を減らしていくようにした方が良さそうです。
耳鼻科でとってもらう
耳垢が固くなってしまった場合には、耳かきや綿棒でとることは難しくなります。
また、耳の穴の形によっては、自分で耳掃除をするのが難しいこともあるといいます。
こんな時には、耳鼻科を受診して耳垢をとってもらいましょう。
耳垢が固くなってしまっていても、耳鼻科では、耳垢を柔らかくしてから取り除いてくれます。
人によっては、耳掃除をしてもらうために、定期的に耳鼻科へ通っているという人もいるようです。
耳掃除が原因で起こりやすい病気
耳掃除のやり方が上手くできていないと、耳の病気になってしまうこともあります。
外耳道炎
耳掃除の際に、外耳道の皮膚を強く擦ってしまうと、皮膚が傷ついて出血してしまうことがあります。
その傷口から細菌等が入り込み、炎症を起こしてしまうのが、外耳道炎です。
主な症状は、耳のかゆみ、痛み、灼熱感などて、酷くなると、耳だれが見られることもあるといいます。
外耳にかゆみや痛みがある場合、気になって耳をいじってしまうと、さらに症状が酷くなることが多いので、できるだけ早く耳鼻科を受診して、治療を受けるようにしましょう。
そのまま放っておくと、聴力が低下してしまうこともあるといわれています。
外傷性鼓膜穿孔
耳かきや綿棒を、耳の奥深くまで入れてしまうと、鼓膜を破ってしまうこともあります。
外傷性鼓膜穿孔(がいしょうせいこまくせんこう)と呼ばれますが、鼓膜が破れると、耳が痛くなるのはもちろんですが、音が聞こえなくなったり、頭痛やめまいが起こったりします。
すぐに耳鼻科を受診して、治療を受けましょう。
まとめ
古くなった耳垢は、自然に外に押し出されていくので、そんなに頻繁に耳掃除をする必要はないといわれています。
耳の奥にある耳垢を無理に取ろうとすると、かえって、耳に悪影響を及ぼしてしまうことも少なくありません。
耳掃除のやり過ぎは、外耳道を傷つけてしまう恐れもあるので、頻度を減らして、無理なくやさしく耳掃除をするようにしたいですね。