風邪と聞くと、寒い冬の時期に引くイメージが強いですが、案外、夏に風邪を引くという人も多くいます。
夏風邪は長引くともいわれますが、夏風邪は、冬に引く風邪とは原因になるウイルスが違っていて、症状も冬の風邪とは少し違った傾向があります。
夏風邪の症状の大きな特徴の一つが、長引く「咳」。
一旦夏風邪を引いてしまうと、咳が長引くことが多いです。
夏風邪の原因と主な症状にはどのようなものがあり、治し方はどうすればいいのでしょう。
夏風邪
夏風邪の原因と症状
風邪の原因となるウイルスは、200種類以上もあるといわれています。
風邪のウイルスは、低温で乾燥した環境を好むというのが一般的で、代表的なウイルスに、冬の風邪の原因となる「コロナウイルス」や「RSウイルス」、「インフルエンザウイルス」などがあります。
しかし、風邪のウイルスの中には、夏の暑さと湿気を好んで活発に活動するウイルスもあります。
このウイルスが夏風邪の原因になりますが、代表的な夏風邪のウイルスが「アデノウイルス」と「エンテロウイルス」です。
アデノウイルスは主に扁桃腺やリンパ節で増殖し、エンテロウイルスは主に腸で増殖していきます。
このため、夏風邪の症状には、「発熱」に加えて、「喉の痛み」「腹痛」「下痢」などが現れることが多いというわけです。
「夏風邪はお腹にきやすい」とよくいわれますが、これは、主にエンテロウイルスが腸で急激に増殖するためです。
また、咽頭炎などを起こして喉に痛みがあると、飲んだリ食べたりするのが辛くなり、結果として、体力が低下して、風邪の治りが遅くなってしまうということもよくあります。
対処法や予防法をしっかりと知っておいて、風邪をこじらせないようにしましょう。
ちなみに、夏風邪が流行る時期は、気温と湿度が高くなり始める6月頃から暑さが和らぎ始める9月上旬頃までというのが一般的です。
夏風邪の対処法・治し方
風邪は、疲労が溜まったりして、体力や免疫力が低くなっているときに、侵入してきたウイルスに抵抗できずに罹ってしまいます。
夏風邪のウイルスに対しては、有効な治療薬がないというのが現状です。
抗生物質は、細菌には効きますが、ウイルスには効きません。
夏風邪のときに薬を飲むことも多いですが、これは、夏風邪の症状の発熱、咳などの症状を緩和するためのもので、夏風邪の原因となるウイルスそのものを退治するためのものではありません。
夏風邪に対しては、症状を緩和させる対処療法を行いながら、少しずつ免疫力をつけて自然に治るのを待つしかないというのが現状です。
夏風邪を治す一番の方法は、とにかく「体力」や「免疫力」を回復させることです。
しかし、風邪の発熱、咳、下痢などの症状は、その症状自体が、体力や免疫力の回復を遅らせる原因になります。
下痢になると、腸から十分な栄養が吸収できなくなりますし、咳によるエネルギーの消耗は意外に大きいです。
また、咳は寝ている時にも出ることが多いので、夜中に咳込んで睡眠不足の状態にもなりやすくなります。
体力や免疫力がなかなか回復しないということが、夏風邪が長引く原因の一つになっています。
咳や下痢にうまく対処することが、夏風邪を早く治すための重要なポイントになります。
体力を消耗させない
夏風邪を治すには、とにかく体力や免疫力をつけることが大切ですが、熱が高い、喉が痛い、お腹の調子が悪い、というような状態で、しっかりと食事をとるというのは難しいものです。
まずは、体力を消耗させないように、睡眠を十分にとって体をしっかり休ませるようにしましょう。
風邪を引いているときにエアコンを使うのは良くないと思われるかもしれませんが、暑さで寝苦しくて眠れないことの方が、夏風邪にとっては問題になります。
エアコンは、直接風が体に当たらないようにして、温度を26~28℃程度の高めに設定してタイマーなどを活用すれば、快適な環境で眠りやすくなります。
食事は、おかゆ、うどん、豆腐など、柔らかくて喉への刺激が少ないものにすれば、食べやすいです。
脱水症状を避けるため、水分補給はしっかり行うようにしましょう。
冷えた飲み物はできるだけ避けて、常温の水、ミネラルウォーター、スポーツドリンクなどがお勧めです。
咳への対処
夏風邪の症状に多い「咳」は、昼間だけではなく、夜寝ているときに出ることも多いです。
咳をすることでエネルギーを消耗し、夜に眠れないことで、さらに体力の回復が遅れてしまいます。
咳が止まらなかったり、痰が絡んだリする時には、
・室温を適度に保つ(26~28℃程度)
・湿度を適度に保つ(50~60%程度)
・水分を多めにとる
・温かい飲み物を飲む
・うがいをする
などの対策をすれば、症状が軽くなりやすいです。
それでも、治まらないようなら、咳止めのシロップを使ってみるのも一つの方法です。
総合感冒薬にも、咳を抑える成分は含まれていますが、咳を止める目的なら、咳止め専用のシロップの方がお勧めです。
咳止めシロップを寝る前に飲めば、咳のために夜中に目覚めることも少なくなるので、体力の回復にも効果的です。
下痢への対応
夏風邪の症状に多いのが「下痢」ですが、非常に激しい下痢の場合以外は、下痢止めの薬を使うのは、控えた方が無難です。
下痢は、体内の不要なもの(菌やウイルスも含めて)を、体の外に出そうとする生理作用です。
それを薬によって無理に止めてしまうと、外に出してしまいたい菌やウイルスなどの不要なものが体内に残ってしまい、かえって夏風邪を長引かせる原因にもなってしまいます。
薬を使うとすれば、下痢止めより「整腸剤」の方がいいようです。
下痢をすると、体内の多くの水分が失われていきます。
脱水症状を防ぐため、冷えていないミネラルウォーターやスポーツドリンクなどをこまめに飲んで、水分補給をするようにしましょう。
水分と一緒に塩分(ナトリウム)も失われているので、下痢が長引く場合には、「スポーツドリンク」での水分補給がお勧めです。
お腹の調子が悪い時には、お腹を温めることが多いですが、お腹よりも背中や腰が冷えていることが多いので、腹巻きやバスタオルなどを腰の周りに巻くなどして、腰や背中を冷やさないようにするといいようです。
夏風邪の時にお勧めの食べ物
風邪を引いて食欲がない時には、「おかゆ」や「やわらかく炊いたご飯」などがお勧めです。
喉越しが良いので食欲がなくても食べやすく、消化するのに、あまりエネルギーを使わないという利点もあります。
梅干しや青のりなどを加えることで、栄養価も高くなり、消化の助けにもなります。
喉が痛い時
生姜、ねぎ、大根、スープ、ゼリー など
夏風邪では、喉に痛みがあって咳が出ることが多いです。
喉に痛みがあるときは、やわらかいゼリー、喉ごしの良いスープ、茶わん蒸しなど、喉を刺激しない食べ物が食べやすいです。
生姜、ねぎ、大根などには、喉の炎症を緩和させる作用があるので、雑炊の具にしたり、うどんなどと一緒に柔らかく煮込んで食べると良いです。
すりおろした少量の生姜をお湯に混ぜ、ハチミツとレモン汁を少し加えて「生姜湯」にして飲めば、痛みも少しやわらぎます。
下痢の時
豆腐、卵、うどん など
夏風邪では、下痢や腹痛などの症状が出ることも多いです。
下痢をしているときには食欲も湧きにくいですが、少しずつでも食べるようにしたいです。
お勧めは、良質のタンパク質が多く含まれている「豆腐」や「卵」です。
他にも、すりおろしリンゴや柔らかく煮込んだうどんなども、消化が良いのでお勧めです。
お腹の調子が良くなってきたら、少しずつ固形のものを食べるようにしましょう。
子供がかかりやすい夏風邪
学校、図書館、プールなどは、夏風邪の原因となるウイルスに触れやすい場所です。
一般的に、夏風邪の症状は比較的穏やかなことが多いですが、抵抗力の低い子供は、症状が急変することもあるので注意が必要です。
プール熱
プール熱は、正式には「咽頭結膜炎」と呼ばれ、5歳以下の子供が約6割を占める夏風邪です。
高熱が1週間程度続き、さらに充血やのどの痛みなどの症状が現れます。
プールで感染することが多いため「プール熱」と呼ばれますが、感染力が強いため、数日間は学校を休む必要があります。
重症化すると、呼吸障害を起こすこともあります。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、6月~7月の梅雨時期に流行ることが多い、4歳以下の子供がかかりやすい夏風邪です。
高熱が出て口の中に水泡ができ喉にも痛みが出て、食事をするのもつらくなりますが、1週間程度安静にしていれば、症状は治まってきます。
重症化すると、髄膜炎や脳炎を起こすこともあります。
手足口病
最初は微熱や食欲不振などの症状がでて、2日程経つと手足や口の中に赤い水疱が表われます。
手足口病が重症化することは少ないといわれていますが、「エンテロウイルス71」に感染した場合には、重症化するといわれています。
咳が長引くときは他の病気も疑う
夏風邪で咳が長引くときには、他の病気の可能性もあります。
咳喘息
「咳喘息」は、空咳が続きますが、喘息でよくみられる、ヒューヒュー、ゼーゼーという息苦しさはほとんどないといわれています。
温度差によって咳が出たり、明け方になると咳込むことが多いのが特徴で、発熱することはあまりないようです。
咳喘息から喘息になることもあるので、きちんと治療することが大切です。
夏型過敏性肺炎
夏場、湿度が高くて日当たりの悪い場所に発生する「トリコスポロン」というカビ菌が原因になる病気です。
トリコスポロンは、キッチン、風呂場、寝具などに繁殖することが多いようです。
夏に発熱して咳がでるため、夏風邪と思ってしまうことも多いようですが、熱が出て咳がなかなか止まらない場合は、「夏型過敏性肺炎」かもしれません。
夏型過敏性肺炎は、自宅や職場のカビ菌が原因になっているので、旅行などに行って自宅や職場から離れると、症状が治まることが多いというのが特徴です。
夏風邪だと思っていても、熱が出て咳が長引くような場合には、一度、呼吸器科で診察を受けてみましょう。
夏風邪を長引かせないために
夏風邪が長引いてしまう要因には、喉の痛みで十分な食事がとれずに体力が回復できないことや、暑さのために良質な睡眠がとれないことなどがあります。
食事は、おかゆ、うどん、豆腐など、柔らかくて喉への刺激が少ないものにすれば食べやすくなります。
ゼリーなども、喉越しが良くて食べやすいのでお勧めです。
下痢の症状がなければ、アイスクリームも喉の痛みを軽減させる働きがあるので、食べ過ぎなければいいかもしれません。
また、夏風邪に冷房は良くないといわれたりもしますが、暑さのために良質な睡眠がとれないことの方が問題です。
体に直接エアコンの風が当たらないようにして、室温が低くなり過ぎないように26~28℃程度に設定すれば、暑い夜でも眠りやすくなり、体力も回復しやすくなります。
エアコンのタイマーも上手に活用しましょう。
夏風邪のウイルスに直接的に効く薬はなくても、つらい症状を緩和させる薬は処方してもらえます。
夏風邪の症状がひどい時には、放っておかずに早めに専門医に診てもらうようにしましょう。
夏風邪を予防する
夏風邪には、ワクチンはありません。
生活習慣を改善するなどして、夏風邪を予防するようにしましょう。
手洗い・うがい
夏風邪も、一般的な風邪と同じように、咳やくしゃみなどによってウイルスが拡散して感染していきます。
手や口の中に付いているウイルスを洗い流してしまうためにも、外出先から帰ってきた時には、手洗い・うがいをしっかりとするようにしましょう。
アルコールを使った除菌も効果的です。
また、食事の前にも手洗いを忘れないようにしましょう。
バランスの良い食事
夏風邪に感染しやすいのは、抵抗力が落ちてしまっている時です。
夏は、暑さのために食欲が落ちる傾向にありますが、きちんと食事をとらないと、体力を消耗して抵抗力も落ちてしまいます。
冷えたそうめんやそばなどは、喉越しも良く食べやすいですが、これらの食べやすいものばかり食べていると栄養が偏って、体力も落ちてしまいます。
肉、野菜、豆、海藻類など、バランスの良い食事をするように心がけましょう。
十分な睡眠
睡眠不足になると、体力が落ちてしまいます。
特に夏場は、暑さのために睡眠が浅くなりやすく、疲れも取れにくくなりがちです。
できるだけ早めに就寝して、しっかりと疲れを取るように心がけましょう。
寝苦しい場合には、夏場であっても、就寝の1~2時間くらい前にぬるめのお湯に10~15分程度浸かって一旦体を温めれば、その後、徐々に体温が下がっていって、寝つきも良くなります。
冷房対策
部屋が冷え過ぎていると、体温調整が上手くできなくなって、自律神経が乱れて免疫力が低下してしまいます。
自分で室温の調整ができる場合には、部屋の温度は、26~28℃程度を保つようにして、外出する際には、冷えすぎの冷房対策として、薄い上着、靴下、ひざ掛けなどを持ち歩くようにしましょう。
まとめ
夏風邪を早く治すには、体力と免疫力を回復させることが大切です。
栄養と睡眠をしっかりとって、自分自身の治癒力を高めましょう。
夏風邪を引かないように、普段から、規則正しい生活やバランスの良い食事に心がけて、ウイルスに対抗できる体を作っておきたいですね。
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