犬は、その優れた「嗅覚」を活かして、空港での麻薬の取り締まりなどでも、大活躍しています。
「そんなに重要な仕事を犬に任せて大丈夫なのか」とも思ってしまいますが、「犬の嗅覚は、人間の100万倍も優れている」と聞くと納得してしまいます。
人間は「視覚」、犬は「嗅覚」
「人間」には、「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」の「五感」がありますが、外から取り入れる情報は、ほとんどを「視覚」に頼っているといわれます。
「犬」も「人間」と同じように「五感」がありますが、犬の場合は「嗅覚」が中心になっているといわれています。
犬の「視覚」は、ほぼ「灰色一色」で、人間のようにカラーで景色を見ているわけではないといわれます。
においは、鼻の中の「嗅上皮(きゅうじょうひ)」というところで、キャッチされます。
「人間の嗅上皮」は「3~7平方センチメートル程度」で、面積にすると「1円玉~10円玉」くらいの大きさとされていて、そこに含まれる「嗅細胞の数」は「500万個程度」といわれています。
一方「犬の嗅上皮」は「150~390平方センチメートル程度」とされていて、「人間の50倍以上」にもなりますが、こちらを面積にすると「1000円札」くらいの大きさがあり、そこに含まれる「嗅細胞の数」は「約2億2千万個」といわれていて、人間をはるかに圧倒しています。
ドラマなどで、警察犬が犯人の持ち物を手がかりに追跡していくシーンがありますが、あれは誇張した演出というわけではないようです。
人間は、1リットルの空気中に400億分の1のアンモニアがあれば嗅ぎ分けることができますが、犬は、それの「100万分の1」のアンモニアでも、嗅ぎ分けてしまうといわれています。
これを「視覚」に例えていうと、「人間」が「肉眼」で見ているものを、「犬」は「顕微鏡」で細かいところまで見ている、というような感覚かもしれません。
遠くのにおいは「苦手」
「犬の嗅覚が優れている」ということは間違いありませんが、それは「ごく僅かなにおい」でも嗅ぎ分けることができるということで、距離が離れた「遠くのにおい」を嗅ぎとることができるということではありません。
犬がにおいを嗅ぎ分けられるのは、距離にして「数メートル内」くらいだとされています。
ドラマなどで、警察犬が「におい」をたよりにして犯人を追っていくシーンがありますが、これは、数メートル内に点在している犯人の足跡などのにおいを、順に追っていっているという想定といえます。
遠く離れた場所にいる犯人のにおいを、鋭く嗅ぎ分けているというわけではありません。
短頭犬種は、嗅覚が劣る
全般的に「犬の嗅覚」は優れていますが、すべての犬種の犬の嗅覚が優れているわけではありません。
中でも「短頭犬種」は、「嗅覚があまりよくない」犬種といわれています。
「短頭犬種」とは、「ブルドッグ」や「パグ」などの「鼻が低い犬種」のことです。
短頭犬種の嗅覚が劣っているのは、嗅上皮の面積が小さいほか、嗅球がつぶされて機能不全に陥っているためではないかと考えられています。
においの階層化
犬には、「においの階層化」という特殊な能力もあるといわれています。
「においの階層化」とは、混じりあった複数のにおいを、それぞれ嗅ぎ分ける能力のこととされています。
例えば、カレーライスのにおいの場合、「カレー全体のにおい」はもちろんですが、その中に含まれる「タマネギ」「にんじん」「じゃがいも」など、「それぞれの食材のにおい」まで嗅ぎ分けることができる能力のことといえます。
犬には、「優れた嗅覚」に加えて「においの階層化」の能力が備わっているので、「手荷物の中から、麻薬の臭いを嗅ぎ分けたり」「多くの足跡の中から、犯人の足跡だけを嗅ぎ分けたり」することができるというわけです。