アスペルガー症候群は「病気」というよりも「特性」

現状では、アスペルガー症候群そのものを治療するための治療法や薬はありません。

そもそも、アスペルガー症候群自体が「治る」とか「治らない」という考え方がそぐわないのかもしれません。

ただ、心身症、睡眠障害、うつなどの二次障害に対しては、有効な治療法もあります。

独特の脳の使い方をするアスペルガー

アスペルガーの人は、脳の使い方が、通常とは違っているということが分かっています。

多くの人は、相手の表情などを見て、その人が今どう感じているかということを読み取ります。

笑顔なら「楽しそう」、目がつり上がっていれば「怒っている」といった具合です。

しかし、アスペルガーの人は、相手の表情を見て感情を読み取るということが上手くできず、通常とは違った脳の部位を活性化させて対処しようとするのです。

アスペルガーの人は、相手の表情や気持ちが読み取れないと言われますが、これは、脳の使い方が違うことによる「認知のズレ」があるからだと言われています。

アスペルガーの人には、これ以外にも特性がありますが、その特性をそのままにして大人になり社会生活を送るようになると、周りとのいろいろな摩擦が生まれ、それが本人のストレスの原因にもなってしまうこともあります。

特性である以上、いくら頑張ってもできないこともあるのです。

アスペルガーの人は、自分の苦手なことは何なのか、することが難しいことはどういうことなのかということを理解して、社会生活をスムーズにおくっていくための「コツ」を身につけていくことが大切だと思います。

また、周りの人たちは、適切に関わっていけるように、アスペルガー症候群がどういうものなのかを正しく理解する必要があります。

アスペルガー症候群を理解したうえで「寄り添う」

子供がアスペルガー症候群と診断された時の父親と母親の受け止め方は、それぞれ共通した傾向が見られると言われています。

父親は「自分もよく似たことがあった」「大人になれば治るだろう」といったように、楽観的なことが多いと言います。

ポジティブと言えなくもないですが、現実を受け止められていないと言ったほうがいいでしょう。

男親の場合、自分の理論に当てはまらないことは放棄してしまうという面がありますが、これでは適切なサポートができず、子供も苦しい毎日を過ごすことになってしまいます。

一方の母親は、現実をありのままに受け入れる傾向が強いと言われています。

複雑なものを複雑なものとして受け入れるベースがあるというわけです。

この現実をありのままに受け入れるという姿勢が、アスペルガー症候群との関わりにおいては、とても重要になります。

「なぜできないの?」「どうしてそんなことをするの?」などと、心理的に追い込んでいくのではなく、ありのままの状態を認めたうえで寄り添っていくように関わっていくのです。

アスペルガーの味方になる

アスペルガーの人は、人間関係にコンプレックスがあって、孤独感や疎外感を感じていることが多いので、家族などの周りの人たちは、もっと味方になってあげてほしいです。

アスペルガー症候群の特性をよく理解して、行動を分析し、そのミスマッチを改善していくために、どんなサポートが必要なのかを考えてあげましょう。

言動の意図が分からない、心が見えないという状態では、サポートする側もつらいものです。

つらくなってサポートする側が潰れてしまう前に、相手のことをよく知って、ありのままを受け止めれるようにしましょう。

社会の常識やルールは一旦置いておいて、悩まされていた言動が、アスペルガー症候群の特性によるものだということが理解できれば、それだけで気楽に関われるようになるはずです。

アスペルガーとの接し方の基本

アスペルガーの人とのコミュニケーションでは、言葉の選び方、話し方にも工夫が必要です。

自分の常識を外す

アスペルガーの人は、多くの人とは物事を認知するメカニズムが違っています。

「これが正しい」というような固定観念や常識を前提にして接すると、必ずギャップが生じます。

人には、それぞれ違った考え方があるので、コミュニケーションにおいてもズレがでてくるのは当然です。

固定観念や常識からは一旦離れて、大きく捉えるようにしてみましょう。

相手の特性に合わせる

アスペルガーの人の特性に気づいたら、それに合わせてみることが大切です。

問題行動が多くて、それを自分がフォローするとなると、気が重くなることもあるかもしれませんが、アスペルガーでなくても、能力の発達には個人差があります。

人には得手、不得手があり、得意なことで活躍している人でも、苦手なことは人に助けてもらっているものです。

アスペルガーの場合もそれと同じです。

感情的にならない

アスペルガーの人は、感情とメッセージを同時に受け取って処理することは苦手です。

例えば、失敗したことに対して、怒りながらまくし立てると、「怒っている」ということは認識できますが、どうして怒っているかということまでは理解できません。

怒る時も、できるだけ冷静を保つようにしましょう。

落ち着いて順序立てて話せば、きちんと理解できるはずです。