闘牛士が持っている「赤い布」は、牛ではなく人間へのアピール?

闘牛といえば、闘牛士が持っている真っ赤な布が、印象的です。

闘牛士が、「ムレータ」と呼ばれる「赤い布」を大きく広げてヒラヒラさせると、興奮した牛が挑発されて突進していきます。

闘牛士は、素早い動きで牛をかわしながら機会をうかがい、一瞬の好機を逃さず剣で牛をしとめます。

この光景を見て、「牛は、あの赤い布に興奮して突進してくる」と思っている人が多いようですが‥。

「赤色」に反応しているわけではない

一般に、暖色系は「興奮させる色」、寒色系は「鎮静させる色」とされていて、暖色系のなかでも「鮮やかな赤色」は「興奮度が高くなる色」といわれています。

しかし、牛は、布が「赤色」だということは「判別できていない」といわれます。

人間と猿以外の多くの動物は、色を判別するのが困難だといわれていて、牛が見ている世界も「モノクロ」だといわれています。

牛は、「布の赤い色に興奮しているわけではない」ということのようです。

「動く布」に反応している

牛が、闘牛士の布に興奮するのは、布の色が「赤い」からではなく、布が「ヒラヒラと動いている」からだといわれます。

そもそも、牛には、動くものに対して危険を感じ、それに過敏に反応して突進するという習性があるとされます。

ネコジャラシを動かすと猫がじゃれついてきますが、これと同じように、「青い布」でも「緑い布」でも、それがヒラヒラと動きさえすれば、牛はそれに反応して「突進してくる」というわけです。

赤色に興奮するのは「人間」

牛が、赤色に反応しているのではないのなら、どうして、闘牛士が持っている布の色は「赤色」なのでしょう。

それは、「赤色」「人間を興奮させる色」だから、というのが理由だといわれます。

闘牛は、多くの観客の前で繰り広げられる「ショー」です。

「赤い布」を広げることで、闘牛士も観客もヒートアップして、より熱狂的にショーを楽しむことができるというわけです。

結局、「赤い布」に興奮しているのは、牛ではなくて私たち人間だったということのようです。