曲の「さわり」とは、曲のどの部分?

「曲のさわりを歌ってください。」と言われたら、曲のどの部分を歌うでしょう。

「その曲の、最初の部分(歌いだしの部分)を歌う」という人が多いかもしれませんが、ほとんどの曲の場合は、それは「さわり」の箇所ではありません。

「さわり」=「聞かせどころ」

「さわり=歌いだし」というわけではありません。

曲の「さわり」とは、その曲の「聞かせどころ」「一番よいところ」のことを指します。

いわゆる、その曲の「サビ」の部分が「さわり」になるというわけです。

「さわり」は、もともとは、義太夫浄瑠璃の用語で、「義太夫節以外の他流の曲節を取り入れた部分」のことで、義太夫節の一曲の中で「一番の聞きどころ」とされる箇所のことを指すといわれます。

「他の曲に触っている」というところから、「さわり(触り)」というようになったといわれています

これが転じて、「芸能の中心となる、見どころや聞きどころ」「話や文章などで、最も感動的・印象的な部分」についても、「さわり」という言葉が使われるようになっていったとされています。

例えば、童話の桃太郎なら、「むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。」という「冒頭の部分」は、この童話の「さわり」ではなく、
「イヌ、サル、キジを従えた桃太郎が、鬼ヶ島で鬼を退治する。」という「クライマックスの部分」が「さわり」ということになります。

どの部分を「さわり」と捉えるかは、人それぞれの感覚で違ってくるかもしれませんが、「さわり」が「最初の部分」という意味ではない、というのは確かなことです。

「曲のさわり」というと「歌いだしの部分」という意味に捉える人が多いのは、「さわり」を「軽く触る」というようなニュアンスにとって、曲の最初の部分に「ちょっと触れる」と理解している人が多いからのようです。

ただ、曲によっては、その曲の歌いだしが一番の聞かせどころの「サビ」になっているような曲もあるので、「さわり=歌いだし」が全て的外れという訳でもありません。