寿司屋では、「お茶」のことを「あがり」と呼びます。
「物事の終わり」のことを「あがり」というので、寿司を食べて、最後にお茶を飲むから、「お茶」のことを「あがり」というのだと思うかもしれませんが、そういうわけではありませんでした。
「あがり花」
お茶の「あがり」は、「あがり花」からきているといわれています。
その昔、遊郭では「茶」という言葉が嫌われていました。
お客が来なくて暇になると、芸者さんたちは「お茶」を挽いていましたが、それは、その日売れ残った芸者さんの仕事だったといいます。
そのことから
「茶を挽く」というのは「芸者が暇」という意味に使われるようになり、
売れ残りの芸者さんは「お茶ひき」と呼ばれるようになっていったといわれます。
一方、お声のかかった芸者さんは「おあがりさん」といって、お座敷にあがっていったのだといいます。
縁起担ぎの「あがり花」
「茶」は「茶を挽く」に通じ、売れ残りを指す「縁起の悪い言葉」であるということで、遊郭では「茶」という言葉を使うのを嫌うようになり、
お客が店に上がるようにと縁起を担いで、「あがり花」と呼ぶようになったといわれています。
「あがり花」の「花」は「最初」という意味で、「出たばかり」という意味の「出端」と「花」を掛けたものだとされています。
寿司屋で「お茶」のことを「あがり」と呼ぶのは、この「あがり花」からきていて、「あがり花」の花を略して「あがり」と呼ぶようになったといわれています。
最初に出すお茶は「出花」で、最後に出すお茶が「あがり花」だといわれたりもしますが、
実際のところは、「出花」も「あがり花」も、「最初に出すお茶」のこととされています。
今では、「あがり」というと「最後に出すお茶」というような感覚ですが、本来は「最初に出すお茶」だったというわけです。
職人言葉の「あがり」
「あがり」という言葉は、寿司職人など店側の人が使う言葉とされていて、
「お客さんの食事があがったようなのでお茶を出して」という意味で、「あがり一丁」という風に使われたりもするといわれます。
お客が「あがり」という言葉を使うのを嫌う寿司職人もいるようですが、最近では「回る寿司屋」が多くなってきているので、寿司屋でお茶を頼む機会も、少なくなっていきそうです。