マグロの赤身をのり巻きにした寿司のことを、「鉄火巻き」といいますが、どうして「マグロ巻き」と言わずに「鉄火巻き」というのでしょう。
「鉄火巻き」の名前の由来には、二つの説があります。
「巻き寿司の両端から見えるマグロの色が、赤く熱せられた鉄のように見えるから」
という説と、「鉄火場で出されたことに由来する」という説ですが、有力なのは、後者の説の方のようです。
鉄火場で出されるから「鉄火巻き」
「鉄火巻き」が作られるようになったのは、江戸時代のこととされます。
当時は、「鉄火場」という賭博場で、「花札」や「サイコロ」などの賭博が行われていたといいます。
賭博場には、気性の激しい博徒が集まるので、真っ赤に焼けた鉄に例えて、「賭博場」は「鉄火場」と呼ばれていたといわれます。
「鉄火場」で賭博に興じている人たちが、「手を汚さずに食べることができる食べ物」はないかということで作られたのが、「マグロの赤身を海苔で巻いた寿司」だったといいます。
「サンドイッチ」が、トランプのゲーム中に食べられ始めたのと似ています。
「鉄火場で出されていた寿司」ということで、「鉄火巻き」と呼ばれるようになったというわけです。
「トロ」よりも「赤身」が好まれていた
現在は、「赤身」よりも「トロ」の方が人気があって高価ですが、当時は、脂身の多いものはあまり好まれなかったといわれます。
また、「冷凍」や「冷蔵」の技術もなかったので、傷みやすい「トロ」は、捨てられていたといいます。
今考えると、とても「もったいない」気がしますが‥。
「トロ」の人気が高くなったのは、「食の欧米化」が進んで、日本でも、脂身の多い肉を好んで食べるようになってからのこととされています。
漁船が大型化し、冷凍技術も格段に進歩して、大型のマグロを、新鮮な状態で市場に届けることができるようになると、さらに「トロ」の普及が進んでいきました。
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「鉄火巻き」は、もともとは、握りには使えない「マグロの切れ端」が使われていたといいますが、今では、どこのお寿司屋さんでも、マグロの美味しい部分が使われているようです。