日本の通貨「円」は「えん」と読むので、ローマ字表記にすると「EN」となるような気もしますが、お札には「EN」ではなくて「YEN」と表記されています。
「YEN」を文字どおり発音すると、「えん」ではなく「いぇん」となります。
「円」のローマ字表記が「EN」ではなく「YEN」となっているのには、どんな理由があるのでしょう。
「円」の「YEN」表記
日本の通貨単位が、それまでの「両」から「円」に替わったのは1871年(明治4年)。
「円」と名付けられた理由については、
「硬貨の形が丸いから」
「当時の中国(香港)で流通していた銀貨の単位・円にならったから」
など、いろいろな説がありますが、確定的な理由は定かではないようです。
ただ、円に切り替わった翌年から、すでに「円」のローマ字表記が「YEN」となっていたということは、確かなことのようです。
「円」が「YEN」と表記されるようになった理由については、次の4つの説があります。
外国語との混同を避けるため
「オランダ語」「スペイン語」「フランス語」に「EN」という単語があり、「オランダ語」では、英語の「and」と同じ意味の接続詞で「~と」「そして」という意味になり、「スペイン語」や「フランス語」では、「~の中に」という意味になるといいます。
外国で多用される単語の「EN」と区別するため、これらと同じ表記を回避して「YEN」としたという説。
中国の「元」紙幣からきた
中国の「元」紙幣には、表面に「圓」、裏面に「YUAN」という表示がされていて、これが「YEN」に転化したと考えられるという説。
「EN」が外国人には発音しづらかった
英語の発音では「EN」は「いん」に近い発音になるので、Yをつけて「YEN」としたのではないかという説。
江戸時代には「え」を「いぇ」と発音していた
江戸時代には「え」を「いぇ」と発音していましたが、その発音を明治になってできた「円」にも当てはめて、「YEN」と表記したのではないかという説。
そもそも、昔の日本人は「え」の発音が、今とは違っていたというのです。
江戸末期のローマ字表記には「え」を「YE」と表記したものが多く、江戸は「Yedo」と書いていたといいます。
「え」を「YE」と表記するようになったのは、日本を訪れていたポルトガルの宣教師が、当時の発音を聞いて「YE」と表記したことに始まるといわれています。
まとめ
「円」を「YEN」と表記する理由については、いろいろな説があるようですが、未だに「定説がない」というのが現状のようです。
ちなみに、円の記号の「¥」は、ローマ字表記「YEN」の最初の文字「Y」をデザインしたものとされています。