秘伝書の「虎の巻」は、どうして「虎」?

「虎の巻」とは、秘訣などが書かれている「秘伝書」のことですが、「教科書の解説本」「参考書」「仕事などの手順をまとめたもの」を「虎の巻」と呼ぶこともあります。

「これさえあれば何とかなる」というのが「虎の巻」といえますが、どうして「虎の巻」と呼ばれるのでしょう。

兵法書「六韜」の「虎韜」

「虎の巻」の語源は、中国・周の時代の兵法書「六韜(りくとう)」の第四巻「虎韜(ことう)」にあるといわれています。

「六韜」は、周の「呂尚(太公望)」が、「武王」に兵学を指南するという体裁がとられています。

「六韜」の「韜」は、「弓袋」のことを指すとされますが、「秘伝」「秘訣」という意味でも使われるといわれます。

「六韜」には、「文韜」「武韜」「竜韜」「虎韜」「豹韜」「犬韜」の六編があり、動物の名前がついている編は、その動物の習性から名付けられたといわれています。

「虎」は、勢いが盛んで人も恐れないということから、「虎韜」では「危急の際にも対応できる方法」が説かれているといわれます。

戦における「戦略」や「武器の使用法」について記述されている「虎韜」は、「虎韜の巻」ということから、日本では「虎の巻」とも呼ばれ、「兵法の秘伝書」として珍重したといわれます。

「虎の巻」は、早くから日本に伝わっていて、征夷大将軍で知られる「坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)」も読んでいたという説もあります。

また、中世では、源義経が、陰陽師・鬼一法源(きいちほうげん)が持っていた「兵法の秘伝書」を自分のものにして、力を得たともされています。

「六韜」は、思想的な書物というより、実戦に役立つ技術も多く記された「実用的な軍事書」だったといわれます。

門外不出の秘伝が書かれている「虎の巻」は、中国の兵法書「六韜」の中の「虎韜」という「兵法の秘伝書」が基になっていたというわけです。