太郎は、目の離せない幼児になりました。
目が覚めている間は、常に脳がフル回転している感じでした。
他とは違った幼児期の子育て
朝、目が覚めると、太郎は、すぐに目に付いたおもちゃで遊ぶのに夢中になってしまいます。
「トイレに行く」、「朝ご飯を食べる」、「歯を磨いて顔をパシャパシャする」、「着替える」など、生活の段取り一つ一つを進めることと、太郎の遊びたい欲求との間で、折り合いをつけるのに苦労しました。
「後で」や「これが済んだら」ということは、太郎には通用しませんでした。
アスペルガー症候群であるなしに関わらず、幼児期は、脳の発達段階として、記憶を長くとどめておけません。
そのため、時間の感覚も未発達です。
経験を覚えていられないので、今の欲求に正直な時期です。
記憶が長引かない分、大抵は移り気で、注意を引くことは、それ程難しいことではありません。
でも、太郎は、非常に欲求の強い子で、ごまかしたり、気をそらしたりするのが難しい子でした。
しつけが悪いと責められた
今振り返れば、アスペルガー症候群として明確な兆候だったのかな、と思いますが、当時の私は、アスペルガー症候群という言葉さえ知りませんでした。
周囲には「しつけの悪さ」と見えるので、「育て方が悪い」とよくお叱りも受けました。
でも、太郎の顔はとてもかわいらしく、愛嬌があり、表情豊かで、遊びを見つける天才で、太郎の興味に従って一緒に遊び、知識遊びを手伝うことは、私たち夫婦にとって、とても楽しいものでした。(予測が付かないので、つねに緊張していましたが。)
母親への強いこだわり
太郎は、「遊び」という刺激にとても貪欲で、つねに相手をしてほしがりました。
「待つ」ことがきらいで、よくかんしゃくを起こしました。
昼寝が減り、寝る時間が夜にまとまると、私は家事を進めるのに苦労するようになります。
私の注意が、自分以外に向けられるのを、太郎はとても嫌ったので、太郎が起きる前に出来るだけのことをしようと必死でした。
家事の工夫
料理は怖かったです。
私が注目していることに太郎も注目してしまうので、まな板の上で包丁で刻んでいる野菜にそーっと手が伸びて来た時には、ぞっとしました。
ベビーガードで立ち入り禁止にしてしつけようとしましたが、余りのかんしゃくにあきらめました。
できるだけ太郎の寝ている間に、概ねの調理をするように工夫していました。
当時はアパート住まいで、掃除機や洗濯機を深夜早朝に使う訳にはいきませんでした。
太郎が起きている間にしなければなりません。
まねっこ遊びをさせながら、すきを突いて片付けたり、掃除機をかけたりします。
それでも、本物の掃除機や本物の洗濯物に太郎がこだわりだした時は、「子どもだましが効かなくなったんだ・・・」とあきらめて、丸ごと貸してあげて、その間にテレビを見たり、お茶を飲んだり休憩したりすることにしました。
かんしゃくにうんざり
様々に工夫をすれども、かんしゃくは増え続け、うんざりしていました。
私の子育ての不安や大変さを訴えても、誰もが「みんな、そうよ~」と言ってくれましたが、アスペルガー症候群の太郎の場合は、頻度や程度が、他の子供より強烈だったと思います。