幼稚園時代に、アスペルガー症候群の太郎とのやり取りを強力にバックアップしてくれた「絵カード」というツールは、まさに「神様からの贈り物」でした。
ヘレン・ケラーが、サリバン先生と一緒に、井戸の水で「WATER」という言葉の概念を発見したように、一気に物事が開けていった感じがしました。
絵カードの大活躍で、無事卒園
アスペルガー症候群の太郎も私も、絵カードを使うことに慣れていきました。
私が絵カードを使って知らせようとした内容を、太郎も「知るべきこと」「できるようになるべきこと」として、認識してくれたようでした。
生活全体に余裕がでてきましたし、何よりも、幼稚園の行事に笑顔で参加するようになった太郎を見るのは、とても嬉しいものでした。
幼稚園の先生方からは、「太郎君は小学校でも大丈夫です。」と言ってもらえました。
太郎のこだわりの強さやかんしゃくは、無くなりこそしませんでしたが、明らかに減っていくのが分かりました。
スラスラと絵本を音読し、家庭で用意した算数教材をバリバリ進めるHの様子に、すっかり安心して、「一年生楽しみ!」と張り切っている太郎を、ほほえましく思っていました。
絵カードは、家の中では大活躍でしたが、「発達の個人差のうちかな?」と楽観的に考えて、小学校には、特別な申し入れなどはしませんでした。
幼少のうちは分かりづらいアスペルガー症候群
アスペルガー症候群の診断は、他のタイプの自閉傾向や発達障害に比べ、年齢的に遅く診断される傾向があります。
学童期に入る前には、発達のばらつきにも個人差があるので、確定的な診断には早すぎるのだと思います。
後に知り合ったアスペルガー症候群の子供さん方は、3歳児検診で、発語や発話が極端に遅い点や、コミュニケーションの難しさを指摘され、当初は自閉症と診断されていました。
でも、後に急速に話し出し、知的障害が伴っていないことが分かって、アスペルガー症候群と診断され直したケースが多かったです。
そういった場合は、早い段階で療育手帳を受け、療育プログラムや給付金、専門家の相談などの恩恵が受けられたようです。
太郎の場合は、自治体の集団検診はオールクリアしており、幼稚園での集団生活に参加しづらかったことや、家庭での私の困り感だけが問題だったので、なかなか理解者は得られませんでした。
アスペルガー症候群の太郎も、今は15歳になり、思春期と反抗期の真っただ中にいます。
小さい頃の太郎を振り返ると、アスペルガー症候群という脳の特徴によって、発達が乱れていた(まさに「ディスオーダー」)と評価できます。
専門的な手法で対応が楽になる
アスペルガー症候群の確定的な診断を受ける前に、「絵カード」を使った成功体験を持てたことには、とても大きな意味がありました。
発達検査や医師の診断を受けるのは、この時から3年ほど後のことになります。
「絵カード」の成功体験がなかったら、「アスペルガー症候群」や「自閉症スペクトラム」という言葉に、私自身が打ちのめされてしまい、太郎との毎日がただただ辛く、新聞で見かける不幸な事件に行きついていたかもしれません。
「取りあえず、やってみない?」と上手に導いていただいたことに、とても感謝しています。
太郎の小学校時代(特に診断後)が、私の支援が最も必要とされる時期になりました。
一般的な育児に専門家のスキルを掛け算したような、合わせ技の数々です。
スクールカウンセラーの先生方、精神科のドクターやナース、数々の専門書、以外にもビジネス啓発本など、様々なところから、アスペルガー症候群に対しての必要なスキルを吸収していきました。
「次は、この支援が必要になりますよ。」と事前に分かるわけではありません。
まず、太郎の問題行動やかんしゃくから、ことが始まります。
太郎の目線や感じ方を想像し、原因を探し、太郎の誤解を解き、思いを汲み取り、更に学校側や担任の先生に相談し、交渉する。
太郎と学校現場に併せてカスタマイズするのです。
太郎のためになりたいけど、モンスターペアレントにはなりたくない。
他の子供さん方の発達具合や気持ちも関わって来ます。
とても難しいことですが、素晴らしい先生方に恵まれ(もしくは探し)て、過ごしてくることができました。
アスペルガー症候群の診断に関わらず、専門的なサポートを取り入れて育児が楽になるのであれば、試す価値は大いにあります。