太郎自身がフリースクールで成長したせいか、無理に絡みついてくるような子達には、腹を立てながらでも距離を置けるようになりました。
N先生や他の先生方に太郎が相談できるようになったことも、6年生を無事に乗り切れた理由だと思います。
アスペルガーにとっては一番厳しい中学校時代
近所の私立中学に無事合格し、小学校でのややこしかった人間関係を整理できました。
穏やかな環境のせいか、太郎の中学校での様子は、非常に安定しましたが、常にギリギリの予定を立てるので、提出物の遅れは常習犯です。
そのため、通知表の評価は今一つになりますが、何故かテストの点数は中の上を維持し、高校受験も不思議な勝負強さを発揮して、一つ上のランクに合格してしまいました。
アスペルガー症候群の子供達にとっては、中学校時代が一番厳しい時期になるようです。
周囲が思春期を迎えて、自分との差異に注目しだすと、アスペルガー症候群の子供達の特徴が浮き彫りになってしまいます。
アスペルガー症候群の子供自身の思春期が、同時期に現れて来るかどうかも関わって来ます。
アスペルガー症候群は、それぞれが独自路線で発達していきますので、思春期の現れ方や時期が、他の子達と違うことがあるかもしれません。
アスペルガー仲間の子供さんでは、ある子は中学校になじめず引きこもってしまい、また別の子は「思春期も反抗期もなくて、すごく楽ちん」というお母さんもいます。
太郎の反抗期は、長く激しくしつこい性質で、家庭では最も荒れた時期となりました。
私はとてもやりづらいですが、外面を大事にしてカッコをつけるのに必死で、外で問題行動をしなくなったというのは、有難いと思うべきなのかもしれません。
浪費ぐせのある金銭感覚
アスペルガーであるないにかかわらず、お金の問題は、一生つきまといます。
お金の問題は、親としては、しっかり身につけさせたい分野です。
太郎のアスペルガー症候群の場合は、このままでは将来の金銭面での破たんは明らかです。
アスペルガー症候群の人は「先の見通しを立てづらく」、なおかつ「自分以外の立場を想像しづらい」ので、今の「欲求が絶対」になりがちです。
太郎は「欲しい」と思ったら、「高すぎる」「似たような物を持っている」「今月の残金」という現実的なことが考えられません。
時計が気になりだしたら、時計ばかりを欲しがります。
うんちく好きですから、高級ブランドの高性能の物(6桁以上の値段)を欲しがったりします。
鞄や自転車でも同じことが繰り返されるので、親としては、中学生としてふさわしい内容の物に落ち着けるように導かなければなりません。
一緒に買い物に出かけ、選ぶ楽しみと財布とを釣り合わせる訓練をしている最中です。
お小遣い
現在、太郎は、主人を窓口にしてお小遣いをもらっています。
私が窓口になると、顔を合わせる時間が多すぎて、お金の無心や買いたい物の相談が無限に続いてしまいます。
暴力をふるったり、財布から黙って抜くようなことを始めたので、主人に代わってもらいました。
一度決めたことを変えないアスペルガー(主人)と、欲しい物は何としても欲しいアスペルガー(太郎)の対決です。
何といっても働いているのは主人ですから、この勝負は、主人に軍配があがります。
私は、買い物アドバイザー(特にファッションに関して)に徹するようにしています。
お金やスマホの管理のために、主人と太郎は、よく話し合うようになりました。
月額制ですが、一度に渡さずに小額ずつ必要な分を、主人は太郎に渡します。
カレンダーに記録して、いつでも確認できるようにしています。
主人のアスペルガー症候群の特徴の一つとして、「無駄なことはしない」という傾向があります。
主人は、太郎のお金を管理するようになって、太郎の行動や買い物に注目するようになりました。
逆に言えば、それ以前は「自分には関係ないこと」であって、私が相談しても「ふーん」という調子でした。
お小遣いの窓口になってもらうことで、主人は父親としての役割を果たしやすくなったと思います。
主人の金銭感覚
ちなみに主人自身の金銭感覚は、基本的に「物欲がない」ので、太郎程問題は大きくありません。
しかし「必要である」と判断すれば「先の見通し」より優先されます。
その「必要」が、アスペルガー症候群らしいクセのあるもので、時々良く分からない買い物をしてきます。
また、マネーフォローの感覚が乏しいので、主人の考えた「必要である」物のために、私が必死で資金繰りをしなければならなかったことが多々あります。
太郎が生まれてすぐ、「僕は日本に帰国したら月に10万円分だけ働きます。あとは何とかしてください。子供の面倒は見れませんよ。僕は研究室に行って論文を書かなければなりませんから。」と主人は宣言しました。(この発言には微塵の悪意もありません。)
私が激怒したので、軌道修正して現在にいたるわけですが、お金に関しては今もとんちんかんなところがあるので、注意が必要です。
性教育
中3の時、太郎にガールフレンドができました。
学年が下で、かわいい感じのお嬢さんでした。
我が家で昼食を一緒に食べたり、友達も交えて出かけてみたりと、お付き合いの内容自体は、真剣なものというよりは、「ごっこ」な感じでほほえましかったです。
どうやら、あちらの親御さんには内緒のお付き合いだったらしく、心配した親御さんの反対でもあったのでしょうか、ある日突然お付き合いは短期間で終わったようです。
主人に男親としての性教育を期待するのは無理があるので、私が太郎と話をしました。
「本当は男同士でするべき話だと思うけど、お父さん難しそうだから私がする。
セックスに関して幸せな人生は、そうじゃない人生に比べてはるかに幸せだと思う。
重要なのは確か。
あなたにとってそうであるために、相手の女の子にとってもそうであるべきね。
で、ここからが重要。
女性にとって早すぎるセックスはリスクが大きいから、絶対にまだ手を出すな。
妊娠も大きなリスクだけど、それ以上に、早すぎるセックスの習慣によって脳が「大人になった」と勘違いして、成長ホルモンの分泌を止めちゃう。
すると、体の成長が止まるから、女性の第二次性徴によって子供を産むための器官を厚くしたり大きくしたりが不十分になる。
赤ちゃんが入る子宮とか、赤ちゃんが通る膣とかの壁を、妊娠や出産に耐えられるよう厚く丈夫にしている最中だったのに、途中で止まって組織が薄いままだと、妊娠出産が健康に乗り切れない。
子宮の壁が薄ければ妊娠が継続できないし、それは母体が死にやすいってこと。
膣の壁が薄ければ、出産時に破けて腸や膀胱との間に穴があいてしまう。
便や尿が膣側に漏れてきちゃうようになる。
日本では簡単な外科的手術で治せるけど、アフリカやインドの貧しい地域だとすごく多い症例になっちゃう。
早すぎるセックスは相手を不幸にするの。
相手の将来の健康を損なうから、おまえはあの子に絶対手を出すな。」
アスペルガーの太郎には、知識で責めます。
フィスチラ(産科ろう孔)は、ケニアやエチオピア、インドなど貧しい地域や、伝統的に女性が早く結婚する地域では非常に多い産科事故です。
日常生活が困難になりますので、そういった女性たちは一気に居場所を失い、貧困に直結します。
この話で、太郎が少しは考えて行動してくれたらと願います。
太郎はデートの予定が入ると、がぜん張り切ります。
行く場所や服装について、私に相談しまくります。
私に相談している内は大丈夫だと思っているのですが。