水泳競技の「自由形」では、選手は必ず「クロール」で泳いでいます。
「自由形」なので、どんな泳ぎ方でもいいはずですが、「クロール」以外で泳ぐ選手はいません。
ルール上も、泳ぎ方は指定されていないとされますが、どうして、クロール以外の泳ぎ方をする選手がいないのでしょう。
最も速い泳法
自由形を「クロール」で泳ぐ理由は、「クロールよりも早く泳げる泳法がない」からということです。
水泳は、1896年に開催されたオリンピックの第1回アテネ大会から、競技として行われています。
当時の種目は、水夫のための「100m自由形」1種目のみで、競技も、港の海面で行われたといいます。
当時から、泳法は「クロール」が主流だったといわれます。
「女性の参加」は、1912年の第5回ストックホルム大会からです。
「背泳ぎ」は1900年のパリ大会から、「平泳ぎ」は1904年のセントルイス大会から、競技種目に採用されたとされます。
さらに、1956年のメルボルン大会では、平泳ぎから独立して、「バタフライ」が競技種目となります。
「バタフライ」は、平泳ぎの「うつぶせで左右の手足の動きが対称」という当時のルールの下、1930年代に編み出された泳法ですが、従来の「平泳ぎ」よりも早く泳げるので、この泳法が、平泳ぎの種目を独占するようになってしまったため、「平泳ぎ」から独立することになりました。
しかし、この「バタフライ」も「クロール」の速さには、かないませんでした。
「クロール」という種目が誕生するための条件
現在の水泳競技の種目は「自由形」「背泳ぎ」「平泳ぎ」「バタフライ」の4種類です。
水泳競技として、全ての泳法の中で最も速く泳げる競技として「自由形」は欠かせませんが、現在の4種目に「クロール」を加えて5種目にしたとしても、速いタイムで泳ぐためには、やはり自由形は「クロール」で泳ぐことになります。
このため、実質的には、クロールが「2種目」になってしまうということになってしまいます。
「クロール」という競技種目が新たに設けられるためには、「クロールよりも速く泳げる泳法」が新たに誕生することが、必須条件となりそうです。
そうなれば、「自由形」では「その新たな泳法」で泳ぐようになり、選手は「クロール」という競技種目でのみ、クロールで泳ぐことになり、実質的にも、5種類の種目が成立するという可能性が高くなるからです。