背中の手の届かないところがかゆい時に、とても重宝する「孫の手」。
「かゆいところを可愛い孫の手でかいてもらいたい」、という思いが込められているかどうかは定かではありませんが、「孫の手」の先は、孫の小さい手のような形をしています。
「孫の手」は、その名前からも、その形からも、おそらく「孫の手」をモチーフにしているであろうということは、間違いないようにも思えます。
しかし、「孫の手」という名称の起源は、「孫」とは全く関係のないところにありました。
「孫」は「麻姑」
本来「孫の手」は、「麻姑の手」だったといいます。
江戸時代の「和漢三才図絵」という百科事典では、
「爪杖(そうじょう)(=まごのて)」の解説として、「桑の木を用いて手指の形をつくり、自ら背をかく所以のもの。俗にこれを麻姑の手という」とされていたといいます。
中国の故事が由来
中国に次のような故事があります。
漢の時代に、王遠という仙人がいました。
王遠が弟子の蔡経に再開したとき、女仙人の麻姑に「蔡経のところにいるので、久しぶりに会わないか」と伝えると、麻姑はすぐにやってきました。
麻姑の手を見た蔡経は「鳥のように長い爪だ。この爪でかゆいところをかいてもらったら、どんなに気持ちがいいだろう。」と思いを巡らせていましたが、それを見抜いた王遠に叱責されてしまいました。
これは、「麻姑掻痒(まこそうよう)」という故事ですが、「麻姑の手」は、この故事に由来しているといわれています。
「孫の手で背中をかく」というのは、「かわいい孫に背中をかいてもらっている」のではなく、「長い爪が美しい綺麗なお姉さんに背中をかいてもらっている」というイメージが正しいのかもしれません。