快眠のための入浴法/「睡眠」と「入浴」の関係

風呂

「風呂に入ってから寝ると、ぐっすり眠ることができる」といわれますが、風呂に入れば、冬場なら冷えた体が温められ、夏場なら汗を流してさっぱりできるので、寝つきも良くなることが多いです。

気分的に眠りやすくなるという以外に、生理的に見ても、「入浴」は「快眠」に効果があるということが分かっています。

「質の良い睡眠」をとるためには、どんなことに気をつけて風呂に入ればいいのでしょう。

体温と眠気の関係

体温は、日中に活動している時は高く、夜にリラックスしている時は低くなるというように、一日中一定しているというわけではありません。

体温は、朝起きると上昇し始めて、午後4時頃にピークをむかえ、その後は、次第に下がっていくというのが一般的とされています。

夜、リラッスクしてくつろいでいると、体温は下がっていきますが、体温がある程度下がると「眠気」を感じるようになります。

体温が下がる「スピード」も眠気に関係していて、「体温が下がるスピードが早いほど、感じる眠気が強くなる」といわれています。

この「体温」と「眠気」の関係が分かれば、「快眠のための入浴法」のポイントが見えてきます。

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深部体温

体温には大きく分けて、「表面体温」「深部体温」の2種類があります。

一般的に、体温計で計っているのは「表面体温」で、一方の「深部体温」は「体内の内臓」などの温度のことです。

「深部体温」は、直腸の温度を計ることが多いので、「直腸体温」と呼ばれることもありますが、睡眠には、この「深部体温」が深く関わっているといわれています。

深部体温のリズム

「深部体温」は、朝起きてから約11時間後に最も高くなり、約22時間後に最も低くなるといわれています。

朝6時に起床した場合、深部体温は、午後5時頃に最も高くなり、明け方の午前4時頃に最も低くなることになります。

徹夜をしていると、明け方頃に猛烈に眠くなりますが、これは、深部体温が低下しているということが大きく関係しているといわれます。

睡眠中は深部体温が低くなる

午後5時頃に最も高くなった深部体温は、その後徐々に下がっていって、午後8時を過ぎた頃には、深部体温を下げるため手足の血管が拡張して血行が良くなり、熱を放出するようになるといわれます。

眠りに入ると、深部体温は急速に低下していき、深い睡眠状態になると、体温調整のために汗をかくようになり、さらに深部体温が低下していきます。

「深部体温が下がる」ことで「快適な睡眠」を得ることができるようになるので、意識的に深部体温をコントロールすることで、寝つきを良くして快適な睡眠を得やすくすることができるといわれます。

体温が下がる時に眠気を感じる

人は、深部体温が急激に下がると、眠気を感じるといわれています。

子供が寝る前に、「手足が温かく」なるということはよく知られていますが、これは、血液を体の末端の手足に集めて熱を放散させているからです。

手足が温かくなるので、体温が上がったように感じますが、それは、放散する熱が手足に集まってきて、皮膚温(表面体温)が上がっているだけで、脳や体の深部体温は下がっていっているといわれます。

「手足が温かくなっているとき」は、「深部体温が下がっているとき」というわけです。

子供が突然眠ってしまうのは、この「深部体温」の「急激な低下」によるものだといわれています。

深部体温が下がると眠くなるというのは、子供でも大人でも変わりはないので、同じような状況になれば、大人もすぐに眠りにつけるはずだというわけです。

しかし、大人の場合は、ストレスなどの影響もあって、手足の血の巡りが子供に比べて悪くなっている分、体温を放熱する効率も低くなっているために、体温が下がるスピードが遅くなり、子供のように強い眠気を感じにくく、すぐに寝入るというわけにはいかないといわれます。

ただ、体温を放熱する効率が低くなっていたとしても、意識的に体温を上げれば、その反動で体温も下がりやすくなるので、寝つきを良くすることも可能になるというわけです。

体温を意識的に上げる

夜になると、自然に体温も下がってきますが、その低下のスピードは、比較的緩やかです。

「体温が下がる時」には「眠気」を感じますが、前述したとおり、体温の低下スピードが速いほど、感じる眠気も強くなるといわれています。

風呂に入って、意識的に、一旦体温を上げれば、その後の体温の低下スピードもアップするので、より強い眠気を導くことができるようになるというわけです。

この時、「意識的に上げる体温の温度」は「1度程度」を目安にすると良いといわれています。

一旦上がった体温が下がっていくときに、眠気を感じるので、その時を逃さず、すぐに就寝するようにしましょう。

入浴と眠気の関係

「寝つきを良くする」ために「深部体温を上げる」には、寝る1~2時間前に風呂に浸かることが、非常に効果的とされています。

温かい風呂に浸かることで、体が温まっていき、末梢の血管は拡張していきます。

十分に体を温めて風呂からあがると、体からは熱がどんどん放出されて、体温が急速に低下していきます。

入浴することで上昇した体温が、入浴後に「急速に低下」するということが、「入浴が眠気を導く」一番の理由といわれます。

ポイントは、「一旦上昇した体温が低下する」ということです。

また、ある程度の温度(39~40℃以上)で体を温めると、眠る際に「デルタ波」が発生しやすくなるともいわれています。

デルタ波は、深い眠り(ノンレム睡眠)の際に発生するとされる脳波です。

このため、風呂で体を温めることが、深い眠りにつながるといわれています。

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快眠のための入浴法

シャワーではなく、湯船に浸かる

忙しい時や夏の暑い時期などには、湯船に浸からずにシャワーで済ませてしまうということも多いかもしれません。

「身体の汚れを落とす」ということからすればシャワーで十分かもしれませんが、「快眠につなげる」ということからすると、シャワーでは効果が小さくなってしまいます。

シャワーは、お湯を体に当てているだけなので、体温が上昇するということは、そんなに期待できないからです。

寝つきを良くして質の良い睡眠をとるためには、体温の低下スピードを上げ、発生するデルタ波を増やす必要がありますが、体温が上がらなければ、これらのことは期待できません。

快眠につなげるためには、湯船にゆっくり浸かって、しっかりと体温を上げることが重要になります。

風呂の温度は39~40℃前後が理想

快眠のためには、風呂の温度は「39~40℃前後」が良いといわれています。

39~40℃のお湯というと、少しぬるく感じるかもしれませんが、この程度の温度のお湯が、体を適度に温めることができて、デルタ波の増加も期待できるといわれています。

また、気分的にリラックスしやすいともいわれています。

38℃以下の低温だと、体温とほとんど変わらないので、体温上昇という意味ではあまり効果がなく、デルタ波の増加も期待薄といわれます。

一方、42℃以上の高温も、快眠につなげるという意味では、あまり好ましいとはいえないといわれます。

「熱いお湯」に浸かれば、それだけ体温も高くなるので、入浴後の体温の低下スピードは速くなり、デルタ波も増えやすくなるのは確かですが、熱いお湯に浸かっていると、交感神経が活発になって「脳が覚醒」してしまいます。

この「脳の興奮状態」は、風呂から上がってもしばらく続くので、脳が冴えてしまって、かえって眠りにくくなってしまうといわれます。

「風呂の温度」は、心身がリラックスできる「39~40℃前後」の少しぬるめの温度が、「快眠」のためには最も適しているというわけです。

入浴は就寝する1~2時間前に済ませる

風呂から上がってすぐに眠ろうとしても、体が火照った状態では、なかなか眠れません。

眠気を感じるのは、風呂に入って高くなった体温が下がっていく時です。

体温がまだ下がっていない入浴直後に床に就いてしまうと、布団で保温されて体温が下がらずに、かえって眠れなくなってしまいます。

入浴から就寝するまでには、体温が十分に下がるよう、最低でも1時間、できれば2時間程度は開ける必要がありそうです。

入浴時間は15~20分程度

入浴する時間は、最低でも10分程度は、確保する必要がありそうです。

入浴時間が短いと、体の表面は温まりますが、体の深部の体温までは上昇していきません。

体の表面だけが温まったとしても、睡眠への効果は、あまり期待することはできません。

睡眠への効果のためには、「深部体温」を上げる必要があるからです。

快眠につなげるための深部体温を上昇させる目安は「1℃程度」ですが、「39℃のお湯なら20分程度」「40℃のお湯なら15分程度」浸かっていれば、「深部体温が約1℃上昇する」といわれているので、ゆっくりと湯船に浸かることが大切です。

入浴後の部屋の温度を適温に

入浴後は、自然に体温が低下していくように、「室内の温度」を適温に保つことも大切です。

あまり気にしすぎる必要はないかもしれませんが、「室温は22~24℃程度」を目安にすると良いといわれています。

特に冬場などは、暖房で室内を暖めすぎてしまうと、体温が下がりにくくなって、寝つきが悪くなってしまうこともあるようです。

「寝つきを良くする」ためには、「一旦上昇させた体温」を「下げる」必要があります。

まとめ

「入浴」が「睡眠」に良い影響を与えるのは、体を温めることで、入浴後の体温が下がるスピードが速まって「眠気」を感じやすくなり、デルタ波が出やすくなることで、深い眠りに就きやすくなるからだといわれます。

実際のところ、体が温まる方法ならば、入浴以外でも睡眠への良い効果は得られるとされています。

例えば、就寝の2~3時間前に軽めの有酸素運動をすることで、同様の効果をもたらすことが可能ですし、40℃前後の低温サウナやミストサウナなどでは、睡眠への良い効果も確認されているといわれます。

ただ、運動後には汗を流すために風呂に入るでしょうし、自宅にサウナというのは、あまり現実的ではありません。

結局のところ、風呂に入ることが、寝る前に体を温める一番の方法といえそうです。