「睡眠不足の解消」と「眠気の対処」

朝の窓辺

睡眠不足になると、日中に強い眠気を感じたり、ひどく疲れを感じたりします。

こういう状態になると、自分でも「睡眠が不足している」ということが分かりますが、ここまではっきりとした症状が出ていなくても、睡眠不足のサインが出ていることもあります。

一見、睡眠不足とは関係のないようなことが、実は睡眠が不足していることが原因となっていることがあります。

自分では十分に眠っていると思っていても、ひょっとすると「睡眠不足」の状態になっているかもしれません。

睡眠不足の状態

「睡眠不足」が続くと、脳に「眠気」がどんどん溜まっていきます。

起きている間は、活発に活動していても、リラックスしてテレビを観ていても、脳には睡眠物質が溜まっていくといわれています。

この睡眠物質がいっぱいに溜まると、その睡眠物質は分解され始めますが、これが「睡眠」の始まりだといいます。

眠気を感じて睡眠をとると、溜まった睡眠物質が分解され、分解が終わると目覚めて、また睡眠物質を溜めていきます。

人は、睡眠物質を溜めては分解するということを、繰り返しているというわけです。

睡眠時間が不足する状態は、睡眠物質を溜める時間が長くなって、分解する時間が短くなっている状態です。

こうなると、脳には分解されなかった睡眠物質が残っていきますが、これが「睡眠不足」の状態といえます。

睡眠不足で睡眠物質が多く残っていると、脳の働きも低くなってしまいます。

睡眠不足のサイン

日中に眠くならなければ、睡眠は足りていると思いがちですが、眠気を感じなくても、行動の中に睡眠不足のサインが出ていることがあるといいます。

そのサインを見逃さずに、上手く睡眠不足に対処すれば、より快適に過ごせるようになります。

睡眠不足のサインを、いくつか紹介します。

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足をぶつける

家の中を歩いていると、タンスの角に足をぶつけて痛い思いをするということがありますが、脳の覚醒レベルが下がっていると、タンスの角などに足をぶつけやすくなるといいます。

自分ではしっかりと目覚めているつもりでも、脳の覚醒レベルが低下しているからです。

覚醒レベルが低下すると、体の動きを読み取る感覚が低下し、頭で感じるイメージと実際の体の動きにギャップが生まれて、足をぶつけることにつながってしまうことがあるといいます。

同じように、テーブルの角にぶつかったり、ドアに肩をぶつけたりというのも、睡眠不足のサインかもしれません。

飴などを噛み砕く

「噛む」というのは「リズム運動」といえますが、リズムがある運動をすることで、脳に「セロトニン」という物質が分泌されるといわれます。

「セロトニン」には、気分を安定させる作用があるとされ、分泌されると気分がスッキリするといわれています。

噛む以外にも、自転車に乗ったり、ダンスをしたりすることもリズム運動なので、セロトニンが分泌されやすくなります。

不安定な気分になると、脳は、リズムのある運動をするように命令しますが、これは、セロトニンを増やそうとするためだといわれています。

睡眠が不足して気分が不安定になっている時に、飴や氷などの硬いものが口の中に入ってくると、ガリガリとリズミカルに噛んで、脳を安定させようとするわけです。

つい、硬いものを噛み砕いてしまうというのは、睡眠不足のサインかもしれません。

整理ができない

脳の前方にある「前頭葉」は、物事を効率よく進めるための重要な役割を担っていて、「複数の情報を処理する」「考えを切り替える」などというのは、その代表的な働きだといわれます。

事務処理をしている時に、翌日の会議で配布する資料が渡されると、脳は、今している事務作業を一旦やめて、渡された資料をどこか適切な場所に保管した上で、元の事務作業を再開するという判断をします。

しかし、睡眠不足の状態では、即座にこの判断をするのが難しくなってしまうといいます。

判断がつかないので、取りあえず手元に置くということを繰り返して、どんどん机の上が散らかっていってしまうというわけです。

整理できないのは、本人の意識の問題ともいえるかもしれませんが、それまではきちんと整理できていたのに、最近はどういうわけか散らかりだしたという場合は、睡眠不足で脳の機能が低下していることが原因になっているのかもしれません。

ぐっすり眠ったら、案外簡単に片付いてしまうかもしれません。

夜食を我慢できない

脳は、覚醒レベルが低下すると、「エネルギー不足」と判断します。

そうなると、満腹感を感じる「レプチン」という物質が減少し、空腹を感じるようになるといいます。

さらに、食欲を刺激する「グレリン」というホルモンも増えるので、空腹を感じる上に食欲も出てきてしまうといいます。

睡眠不足でなくても夜にお腹がすくことはありますが、睡眠不足の場合は、かなり強い食欲を感じることが多いといわれます。

慢性的な睡眠不足になると、連日の空腹感に加えて、同時に強い食欲も感じるようになるので、我慢できずについ食べてしまうというわけです。

覚醒レベルが低下している時の夜の空腹感は、エネルギー不足と判断する「脳の勘違い」により起こるといわれています。

些細なことにイラッとする

些細なことでも、人に言われるとイラッとして言い返してしまうというのも、睡眠不足のサインだといわれます。

イライラするので、ストレスを発散しようとして飲みに行ったけれども、帰りが遅くなり、また睡眠時間が短くなってしまい、結果的に睡眠不足がひどくなってしまったというような悪循環に陥ることも少なくありません。

「ストレスでよく眠れない。」と言いますが、実は「しっかりと眠っていないから、些細なことでもストレスに感じてしまう。」というのが実態なのかもしれません。

イラッとしたことを「ストレスのため」と思い込んで、気分転換といって飲みに行っても、イラッとする状態が変わるわけではありません。

些細なことでイラッと感じたら、まずは、睡眠は十分にとれているかを考えてみます。

逆に「嫌なことがあっても、一晩寝たらスッキリした」という状態になれば、睡眠不足が解消できたサインといえるかもしれません。

目的を忘れてしまう

何かを買いに行ったときに「あれっ、何を買いに来たのかなぁ?」と目的を忘れてしまったというようなことが、たまにあります。

これは、脳の覚醒レベルが低下しているサインだといわれます。

脳の働きとして、「注意」には4つの段階があるといわれています。

1.選択注意 : 注意する対象を選ぶ。
2.持続的注意 : 選んだ対象に注意を向ける。
3.同時注意 : 一つの対象に注意を向けながら、別の対象にも注意を向ける。
4.転導注意 : 複数の対象に注意を向けながら、必要に応じて焦点を当てる。

仕事などで忙しくしている時、脳は「4」の状態になっていますが、睡眠不足の時には、忙しくなくても「4」の状態になっているといわれています。

「何を買いに来たのかなぁ?」というのは、脳が過剰に興奮して、あちこちに気が散っている状態だと考えられます。

こうした状態の時には、単なる「物忘れ」と考えるのではなく、「脳の覚醒レベルが低下しているから対処してください」という「脳からの警告」だと考えて、睡眠の状況を見直してみるといいかもしれません。

午前中にあくびが出る

昼前になると「あくび」がでることがあります。

睡眠の長さに関係なく、朝起きてから4時間位経過した頃にあくびが出たり、体がだるく感じたりする場合は、睡眠が足りていない可能性があるといわれます。

人間の脳は、起床してから4時間後が最も活発に働く時間帯といわれているので、この時間帯に眠気を感じるのは、睡眠不足の可能性が高いというわけです。

朝6時に起床する人なら、午前10時頃にあくびをしていないかチェックしてみましょう。

眠気の対処

日中の眠気の対処法

昼食を食べてしばらくすると、仕事中にもかかわらず、急に眠気に襲われることがあります。

よく「食事の後は、血液が胃に集中して、脳の血液が少なくなるから眠くなる。」といわれたりもしますが、人間の脳は、その働きを維持するために、1日に2回、脳を積極的に眠らせようとするといわれています。

それが、起床してから約8時間後と約22時間後だといわれています。

朝6時に起床した場合は、昼過ぎの午後2時頃と明け方の午前4時頃に眠気が強くなるということです。

徹夜をしていると、明け方の4時頃に強い眠気を感じるのはこのためです。

このリズムを整えるために、起床後7時間後頃に5~10分間程度「目を閉じる」ようにしてみます。

午前6時に起床した場合は、午後1時頃です。

目を閉じて視覚情報を遮断するだけでも脳が休息でき、溜まった睡眠物質を、ある程度減らすことができるといわれます。

疲れた時には、ただ休憩しても、目を閉じなければ脳を休めることは難しいです。

昼過ぎに短時間の昼寝をすればリフレッシュができるということは、よく知られるようになってきましたが、昼寝ができないような場合には、目を閉じるだけでもある程度の効果が期待できるというわけです。

夜にまとまった睡眠がとれない時の対処法

人間は、1日に1回まとまった時間眠る「単層性睡眠」ですが、犬や猫などは、1日に何度も寝たり起きたりを繰り返す「多層性睡眠」だといわれます。

しかし、仕事などが忙しいと、1日の睡眠時間が3時間前後しかとれないというケースも少なくありません。

残業や付き合いの飲み会などで寝るのが遅くなっても、翌日は始業時間に間に合うように出勤しなくてはいけません。

睡眠が十分にとれなかった時には、「多層性睡眠」を真似てみるといいかもしれません。

人のあらゆる行動には、「90分の周期」があるともいわれています。

90分を超えると集中力を持続するのが難しくなってくるといわれているので、そのタイミングでうまく休憩を取り入れてみます。

9時始業の場合だと、10時30分、12時、13時30分、15時、16時30分といった感じです。

休憩室などが使えればいいのですが、それが難しいようなら、トイレに行くなどとして、短時間目を閉じるようにするのも一つの方法です。

短時間の「昼寝」ができる環境なら、昼寝がベターです。

忙しくてまとまった時間の脳の休息がとれない場合には、結構効果が見られるといいます。

眠気がやってくる前に脳を休めることで、仕事中の眠気予防にもつながるので、睡眠不足を感じている場合には、試してみるといいかもしれません。

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睡眠不足を解消するための対策

「睡眠不足」の原因には、睡眠時間そのものが短いというほかにも、眠りが浅く「睡眠の質が良くない」ということもあります。

睡眠時間を十分に確保しようと、早い時間に床についても、なかなか眠れなければ睡眠が不足する原因になってしまいます。

睡眠不足を解消するため、睡眠時間を十分に確保することはもちろん大切ですが、寝つきを良くして質の高い睡眠をとるということもとても大切なことです。

睡眠のリズムを整える

寝つきを良くして質の高い睡眠をとるためには、「睡眠のリズム」を整えることが有効な対策といえます。

睡眠のリズムを整えることで、日中は活発に活動し、夜はぐっすりと眠れるようになるといいます。

睡眠不足を解消するには、早く就寝して睡眠時間を十分に確保すればいいと思うかもしれませんが、それだけで十分な睡眠不足解消の対策になっているかといえば、そうとはいえません。

睡眠不足を解消するためには、「質の良い睡眠」「必要なだけの時間」とる必要があるといわれます。

そのためには、「寝つきの良さ」も大切です。

朝の過ごし方で決まる睡眠リズムの良否

「寝つきを良く」して「良質の睡眠」をとるためは、「夜の過ごし方」もポイントになります。

「寝る直前には食事をしない」「夜はできるだけリラックスする」「風呂に入ってさっぱりとした気分にする」など。

もちろん、これらのことも良質の睡眠をとるためにはとても重要なことなのですが、それと同じくらい重要になるのが、朝の過ごし方なのだといいます。

人間には、日中は眠くならずに活発に活動して、夜になると眠くなって体を休めるという「睡眠のリズム」がありますが、一日の睡眠のリズムは、「朝の過ごし方」によって大きく左右されるともいわれています。

睡眠リズムを整えるための朝の過ごし方

朝起きたらカーテンを開ける

楽しみにしていた映画なのに、館内が暗くなると、知らず知らずのうちに眠ってしまうということもあります。

これには、脳から分泌される「メラトニンむという物質が関係しているといわれます。

「メラトニン」が増えると眠くなり、減ると意識がしっかりしますが、このメラトニンは、光によって分泌量が変化するという特徴があるといわれています。

暗くなるほど分泌量が増え、明るくなるほど分泌量が減るといわれます。

映画館で眠くなるのは、館内が暗くなり、メラトニンの分泌量が増えるからだといえます。

明るい状態では、メラトニンの分泌量は減るので、朝起きた時にはカーテンを開けて部屋全体を明るく。

そうすることで、すっきりと目覚めて、爽快に一日をスタートすることができます。

朝、太陽の光を浴びる

メラトニンの分泌には、リズムがあるといわれます。

起床してから4時間以内に脳が光を感知すると一気に減少し、夜暗くなっていくと徐々に増えていき、就寝から3時間後に最も多くなるといわれています。

朝にメラトニンをしっかりと減らしておけば、分泌リズムが強調され、夜のメラトニンの分泌が促されて寝つきが良くなり、睡眠の質も向上しやすくなるというわけです。

「朝、全身に太陽の光を浴びる」のが理想ですが、それが難しいようなら、窓際などの明るいところにいるだけでもOKです。

「毎朝、同じ時間帯に、5分間以上明るいところにいる」ようにすれば、睡眠のリズムが安定するといわれています。

脳が、朝を感じるためには、1,000~2,500ルクスの光が必要とされていますが、一般的な部屋の明るさは500ルクス程度なので、普通に部屋にいるだけでは、脳が朝を感じることは難しくなってしまいます。

晴れた日、窓から1m付近の場所では1,500ルクス程度、窓から外を見れば3,000クルス程度、外に出れば10,000ルクス以上になるので、窓に近づくだけでも、脳に朝を感じさせることができます。

特に意識をしなくても、光を浴びることができる環境を作ることが大切です。

窓際にテーブルを置いて朝食をとったり、窓辺に椅子を置いて新聞を読んだリ、メールのチェックをしたりすれば、自然に脳に朝を感じさせることができます。

朝食ではタンパク質をしっかり摂る

睡眠ホルモンの「メラトニン」は、肉類、魚類、乳製品、大豆製品などに多く含まれている必須アミノ酸の「トリプトファン」が、その原料になっています。

朝食で摂取されたトリプトファンは、脳内物質の「セロトニン」に変換されますが、セロトニンには行動をしなやかにする作用があるといわれています。

セロトニンの分泌量を増やせば、昼間に安定した行動ができるようになるというわけです。

朝食で摂ったトリプトファンは、セロトニンになり、その後メラトニンになっていくので、朝食を食べることで「これから活動する」というサインを送ると同時に、眠る準備も始まるということになります。

トリプトファン(必須アミノ酸)→ セロトニン(脳内物質)→ メラトニン(睡眠ホルモン)

トリプトファンは、タンパク質を多く含んでいる食べ物に比較的多く含まれているといわれています。

快眠に欠かせない「トリプトファン」/多く含む食べ物と食事 >

朝は食欲がないという人も多いかもしれませんが、少しでも多くのトリプトファンを摂っておくことで、快眠しやすい状態に近づけることができるようになります。

睡眠のリズムは、朝の「光」「食事」が大きく影響するといわれます。

朝は食欲がないという人も、起床したら窓辺に近づき光を浴びるという習慣をつくれば、お腹も空きやすくなり、朝食も摂れるようになることがあります。

朝は食欲がないという人は、試してみる価値がありそうです。

日中のセロトニン、夜のメラトニン

セロトニンは、一旦N-アセチルセロトニンに変化した後、メラトニンになるとされますが、セロトニンとメラトニンとは、全く正反対のリズムで分泌されるといいます。

活動を促すセロトニンの分泌量が増えている時には、眠りを促すメラトニン分泌量は減り、逆に、メラトニンの分泌量が増える時には、セロトニンの分泌量は減るというのです。

このことで、日中は活動的に動き、夜はぐっすりと眠ることができるというわけです。

しかし、朝、暗い状態のままで過ごしていると、メラトニンがしっかり減らず、活動を促すセロトニンの分泌が増えてこないので、朝からボーッとした状態になってしまいます。

メラトニンの原料となるトリプトファンを朝食でしっかりと摂りながら、光を浴びてメラトニンをしっかり減らし、セロトニンとのバランスを取っていくことが大切になりそうです。

体内時計は光を感じた時にスタートする

人は、24時間よりも長い「体内時計」をもっているといわれています。

そのため、朝に光を浴びない生活をしていると、1日のスタートが少しずつずれていってしまいます。

これを修正するため、人の体には、朝、光を浴びてメラトニンを減らし、体内時計をリセットする機能が備わっているといわれています。

朝に光を浴びなければ、体内時計をリセットすることができないので、脳の働きもずれてしまいがちです。

1日中スッキリしない中途半端な状態になってしまうと、寝つきも悪くなり、結果的に睡眠不足にもつながりやすくなってしまいます。

朝起きたら、まずは、しっかりと太陽の光を浴びるようにしたいです。

まとめ

自分では、睡眠は十分にとれていると思っていても、実際は睡眠不足の状態になっているということもあります。

睡眠が不足すると、脳の覚醒レベルが低下し、注意力や行動の質も低下して、快適な毎日を過ごせなくなってしまうこともあります。

睡眠不足のサインが出ていないかチェックしてみましょう。

睡眠不足を解消するには、できるだけ早い時間に就寝するようにして、質の良い睡眠を十分とるようにすることが、一番の近道です。

また、睡眠不足というと、夜の睡眠のことだけが原因になっていると考えてしまうかもしれませんが、実は、朝の過ごし方も大きく関わっているようです。

日中の眠気の対処と併せて、根本的に睡眠不足が解消できるよう、もう一度、生活全体のリズムを見直してみるといいかもしれません。