産後の子宮の戻りに必要な期間は?産後の肥立ちを良くするには

「産後の肥立ちが良い」「産後の肥立ちが悪い」ということを耳にすることがあります。

出産後の女性の体調などを表すのに「肥立ち」という言葉が使われますが、妊娠することで大きく変化していた女性の身体が、妊娠前の状態にまで回復することが「産後の肥立ち」と呼ばれます。

出産後は大きく膨らんでいた子宮が元に戻っていきますが、その過程で、子宮が収縮する際に「後陣痛」が起きたり、出血を含んだ分泌物の「悪露(おろ)」が出たりします。

出産後、子宮が元に戻って妊娠する前の身体の状態になるまでには、6~8週間程度の期間がかかるといわれていますが、この期間は「産褥期(さんじょくき)」とも呼ばれます。

産後の肥立ち(子宮の戻り)

産後の子宮の戻りや身体の回復の状態は、出産後の後陣痛や悪露の状態などが目安になるといわれます。

子宮の戻りの早さは、陣痛の強弱に関係することが多い

子宮底長(恥骨の上から子宮の一番上までの長さ)は、本来6~7cm程度ですが、妊娠中には30cm以上にもなるといわれています。

出産直後も、おへそのあたりまでの長さがありますが、出産後は急速に収縮していき、4週間程度で妊娠前とほぼ同じ状態に戻るといわれます。

子宮が戻るスピードには個人差がありますが、お産の際に強い陣痛があって、お産がスムーズに進んで行った場合には、子宮の戻りも比較的早いことが多いとされています。

逆に、陣痛が弱くてお産が長引いた場合には、子宮の戻りも遅くなる傾向にあるようです。

後陣痛は、子宮回復の表れ

産後数日間は、強い子宮の収縮でお腹が絞られるような痛みを感じることがありますが、これは「後陣痛」と呼ばれるもので、順調に子宮が回復していることの表れだといわれています。

後陣痛の痛みは、月経痛よりも少し強い程度と感じる人が多いようです。

痛みのピークは1~2日程度で、その後徐々に治まっていきますが、痛みが強い時には、分娩直後に服用する子宮収縮剤を控えたり、鎮痛剤が処方されたりすることもあるようです。

悪露の量や色の変化は、子宮回復の目安

産後は「悪露」と呼ばれる出血がありますが、特に産後2~3日位は量が多く、1週間ほどすると月経時のような赤褐色の出血になるといわれます。

その後は、子宮が元にもどっていくにつれて量も減り、色も黄色から白色に変わっていって、産後1ヵ月もすれば、透明なおりものになっていきます。

このような悪露の「量」や「色」の変化で、子宮の回復状態を知ることができるとされています。

晩期産褥出血

悪露の状態は人それぞれで、時には産後3週間くらい、月経時のような赤褐色の出血が続くということもあるといわれます。

特に産後6~15日頃は、再度出血しやすいとされる時期ですが、一旦薄くなった悪露の色が再度赤くなって、出血量も増えていくということも少なくないようです。

これは「晩期産褥出血」と呼ばれますが、産後の安静状態から動き始めたことによって、子宮にたまっていた血液が流れだすために起こるものだといわれています。

一時的に出血しても、すぐに治まるようなら大きなトラブルになることは少ないようですが、悪露が長引いてお腹に痛みがある場合は、要注意です。

特に、悪露ににおいがあったり、発熱があったりする場合には、細菌感染が疑われることもあるようです。

過度の安静は、子宮回復が遅れることも

子宮収縮が弱くて悪露が長引く場合は、「過度の安静」が原因になっていることもあるといわれます。

1日中ほとんど寝ているような状態だと、子宮に血がたまって子宮の回復が阻害されるという、悪循環に陥ることも。

一方、産後の早い段階で授乳を開始することは、子宮の回復の助けになるともいわれます。

赤ちゃんに乳首を吸われると、それが刺激になって脳下垂体からオキシトシンというホルモンが分泌されますが、このオキシトシンには、乳汁を分泌させるほか、子宮の収縮を促進する作用があるといわれているからです。

出産直後は、まだ十分に母乳が出ませんが、赤ちゃんに乳首を吸わせて刺激を受けることで、子宮の回復が促進されるというわけです。

子宮復古不全

子宮の収縮が悪くて、妊娠前の状態に戻るまでに時間がかかることを「子宮復古不全」といいます。

子宮復古不全の原因で最も多いのは、子宮内に卵膜や胎盤の一部が残っていることとされますが、微弱陣痛でお産が長引いた場合には、子宮の筋肉が伸びてしまって分娩後スムーズに収縮できないために、子宮の戻りが遅れることがあるといわれます。

子宮の外側に筋腫があっても、子宮の戻りに影響を与えることはあまりないといわれますが、子宮の筋層内に筋腫がある場合には、子宮の戻りに時間がかかることが多くなるといわれています。

産後すぐに活発に動き始めたり、逆に安静にしすぎたりした場合にも、子宮の戻りが遅れてしまうことがあるといわれるので、少しずつ体を動かしていくことが大切になりそうです。

産後の排卵

母乳を与えていない場合には、産後4ヵ月以内には排卵があって月経が再開しますが、母乳を与えている場合には、月経の再開が遅くなる傾向にあるといわれます。

これは、授乳することで、プロラクチンというホルモンが活発に分泌されるようになって、排卵を促進するゴナドトロピンというホルモンの分泌が抑制されるためだとされています。

しかし、授乳をしていても、比較的早い時期に排卵があって月経が再開することもあるので、生理がないからと避妊をしないで性生活を行っていると、予期せぬ妊娠につながることもあるようです。

産後の肥立ちを良くする

産後の肥立ちが悪いと、日常生活にもいろいろな悪影響が出てきてしまいます。

出産後は、赤ちゃんの世話に追われ、自分のことはどうしても後回しになってしまいがちですが、自分の身体の状態が思わしくないと、赤ちゃんの世話も十分にしづらくなってしまいます。

産後の肥立ちを良くするために、意識して行うと良いとされることを紹介します。

十分な休息

出産後は、心と身体をゆっくりと癒すことが大切になります。

退院後の数週間は、できるだけ安静にすることを心がけて、赤ちゃんの世話をする時以外は、できるだけリラックスして過ごすと良いといわれます。

昼夜関係なく授乳をしたり、おむつを替えたりしなければいけないので、どうしても寝不足気味になってしまいます。

昼間でも、赤ちゃんが寝ている時は一緒に横になったり、周囲の人に家事を手伝ってもらうなどして、意識的に身体を休ませる時間を確保するようにすると良いといわれます。

周囲のサポートが得られない場合には、食事は宅配を利用したり、赤ちゃんの世話や家事、掃除などについては、産後ヘルパー(産褥シッター)のサービスを利用したりするのもいいかもしれません。

バランスのとれた食事

良質な母乳を出すためにも、好き嫌いをせずにいろいろな食品をバランス良く食べることが大切だといわれます。

特に、骨や筋肉などの素になる「タンパク質」、母乳で不足しがちになる「カルシウム」、血液を作るために不可欠な「鉄分」などは、意識して摂るように。

授乳期間中は水分も不足がちになるので、意識して水分を摂ることも大切だといわれます。

水分を摂取する際も、冷たい飲み物ではなく温かい飲み物を飲むようにして、身体を冷やさないようにすることも大切です。

入浴を控える

悪露に血液が含まれている間は、細菌の感染を防ぐため、入浴を控えてシャワーで済ませまるようにすると良いといわれます。

目を酷使しない

「産後100日針持つな 妊婦の針仕事は血の道」と言われたりもします。

これは、「産後は母乳を作るのに栄養を取られて視力が一時的に低下し、その時に目と神経を使う仕事をすると回復が遅れ、その後の体にも大きな影響がある。」という意味だといわれます。

目が疲れると、血液循環が悪くなって気分が悪くなったり肩が凝ったりして、体調が悪くなることがありますが、出産で多くの血を消耗した後に目を酷使すると血がさらに不足してしまい、それが子宮の回復にも影響を与えることがあるのかもしれません。

また、目を休めないと脳も休まらないので、安静にしていても目を酷使している状態では、本当の意味でのリラックスした状態にはなれていないかもしれません。

心身ともにリラックスできなければ、身体が元の状態に回復する早さにも影響が出かねません。

昔の「針仕事」は、現在では「スマホ」「パソコン」に当たるともいえます。

特に、就寝前にスマホやパソコンで目を酷使すると、質の良い睡眠がとりづらくなるといわれます。

深い眠りについて、疲労を回復しやすくするためにも、スマホやパソコンを使うのは、ほどほどにしておくのが良さそうです。