市に虎あり(いちにとらあり)
「市に虎あり」の意味
どんなにあり得ないようなことでも、大勢の人が言うと信用されてしまうことのたとえ。
「市に虎あり」の語源・由来
「市に虎あり」の語源は、「戦国策」魏策にある、以下の故事が由来になっています。
魏の龐恭(ほうきょう)が、人質として趙の都・邯鄲(かんたん)に行くことになりました。
そのとき、龐恭が魏王に言いました。
「今一人の者が市場に虎がいると言ったら、王様は信じますか。」
魏王は「信じない。」と言いました。
続けて龐恭は「それでは、二人の者が市場に虎がいる言ったら、王様は信じますか。」
魏王は「いや、それでも信じない。」と言いました。
さらに続けて龐恭は言いました。
「それでは、三人の者が市場に虎がいると言ったら、王様は信じますか。」
魏王は「それならば信じる。」と言いました。
これを聞いて、龐恭が言いました。
「市場に虎などいることがないことはわかりきったことです。
しかし、三人の者が言えば虎がいることになってしまいます。
私はこれから遠く離れた邯鄲へ参りますが、ここから邯鄲までの距離は、市場までの距離よりはるかに遠く離れています。
私の悪いうわさをする者も三人以上でてくるでしょう。
王様におかれては、なにとぞこの点をお察しください。」
これを聞くと、魏王は「わかった。うわさに惑わされず、自分で判断するようにしよう。」と答えました。
龐葱が出発すると、さっそく龐葱の悪いうわさをする者が現れました。
初めは魏王も信じませんでしたが、多くの者が悪いうわさをするようになると、やがて信じるようになってしまいました。
数年後、人質をとかれた龐恭は、すっかり魏王の信用を失っていて、結局王に会うことすらできなかったのです。