アスペルガーの主人の宇宙人っぷりを、更にいくつか紹介します。
この人、本当に大丈夫かな?と思ってしまうことがあります。
アスペルガーの特徴の一つ「感覚過敏」
主人が、家の中で裸で過ごそうとするのにも、閉口しました。
真夜中に単独で活動したがった理由の一つです。
昼は寝るために、窓の鎧戸や遮光カーテンを閉め切り、夜も視線を遮るために、閉め切りです。
「チラッと見えたあの日本人は、変質者だと噂をたてられたらどうするんだ。」というのが主人の主張でしたが、私にしてみれば「事実ではないでしょうか?」です。
「常に裸でいようとするあなたに問題があるのでは?」と尋ねると、「パンツをはくと肩がこるんだ!」と返って来ます。
私には、その感覚は分かりません。
家の中には、大家さんとの共用部分があり、いつ来られるか分かりません。
来客の度に、一々大慌てで下着から着るのでは、不自然極まりないからと、服を着るように説得しましたが、中々改善されません。
ある日、「子供が生まれたら、子供にどう説明するの?」と尋ねると、納得できる理由が見つけられなかったのでしょう、パンツ一枚、Tシャツ一枚から始まり、だんだん増えました。
アスペルガー症候群や、他の発達障害の特徴の一つに「感覚過敏」があります。
おそらく主人は、肌に繊維やゴムが触れることに過敏なのでしょう。
また、周りの意見(裸でいるのはおかしいよ)は、受け入れづらいようです。
自分の視点や思い(「子供にどう説明していいか分からない」)からしか、行動(仕方ないけど着る)できないようです。
これも、太郎のアスペルガーの特徴に書かれていた、「相手の気持ちや感情を理解するために必要な「対人関係や社会性の能力」、相手とイメージを共有するために必要な「イマジネーションの力」に障害がある可能性があります。」という内容を、思い起こさせます。
もともと外出時の服装や、仕事の際のスーツの着用などは普通にできます。
それなりにこだわりもあるらしく、高身長で痩せ形の体系を維持しているので、外見からは、この奇行は想像できません。
大人のアスペルガー症候群は、まるで鎧のようにカッコイイ外面を作って、自分を守ろうとしているのではないかと感じます。
芸能人とよく出会う?
主人は、よく芸能人に出会います(本人の思い込みですが)。
以前箱根に行った時、ホテルのエレベーターで乗り合わせたカップルを、その当時豪華な結婚式で話題になった、元タカラジェンヌとバレエダンサーの夫婦だと言い張りました。
でも、どう見ても別人です。
その女性は、どう考えても元タカラジェンヌ(しかも男役)の身長としては低すぎですし、男性の方も、現役バレエダンサーには程遠い体つきをしていました。
建築家の安藤忠雄氏がコーヒーを飲んでいるのを見たとか、飛行機で私たちの隣の席になった婦人が、野村沙知代さん(野村元監督の夫人)であると、私に耳打ちしたこともあります。(私が普通にその人としゃべって、全くの別人と確認。野村監督夫人がエコノミーでヨーロッパに行くとは思えません。)
ある時、主人の言う芸能人の出どころに気付きました。
朝の情報番組や、ネット上のニュースです。
主人は、世間で話題になっている人を、テレビやパソコンの画面(二次元)で見て、その印象が強いと、自分の目で見た(三次元の)人物が、同じ人だと思えるらしいのです。
特に害は無いので、大抵は「ふーん」と聞き流してあげるのですが、主人には「芸能人によく会うことを、他人には言わない方がいいよ」とアドバイスしてあります。
また、隣の家に住む50代の女性が、実際には二人(奥さんとその長女)いても、主人は一人だと思っていたことがあります。
お隣とのお裾分けのやり取りで、あやうく近所トラブルになりかけて、肝を冷やしました。
どうやら、アスペルガーの主人は、顔で人を識別するのが苦手で、年頃や性別、出会う場所を総合して判断しているようです。
(「隣には50代女性が何人住んでいる?」という私の質問に「一人」と答えたので、主人の誤解が分かりました。因みに、私から見れば、その二人はまったく似ていません。)
これもアスペルガーなど自閉系の症状で、「相貌失認」というものです。
アスペルガー症候群の特徴「数唱が苦手」
アスペルガーの主人は、電話番号や銀行口座の番号、住所の番地など、数字の羅列を正確に伝えるのも難しいようです。
実生活では、出張から帰るはずの日に帰って来なかったり、帰国のフライトの便名がその日の到着便になかったり、「出張の度に、なぜ嘘の(宿泊先)電話番号を教えるのだろう?」が積み重なり、浮気を疑うことになります。
誤解の立証に苦労したことがきっかけで、最近は間違い防止のために、eチケット(電子航空券)のコピーを私に渡すようになりました。
事務手続きも失敗することが多く、銀行の手続きや役所系の手続きを任せると、かなりの確率で滞ります。
この現象も、アスペルガーの太郎の発達検査の中で「数唱(短い数字の羅列を暗記する)」が苦手という結果と重なります。
仕事では大丈夫(らしい)
こんなアスペルガーの主人ですが、仕事では高く評価されています。
仕事が安定してからは、収入も高い方の部類に入ると言って良いでしょう。
本人も「私は、仕事では大丈夫です。」と言い切ります。
事務上の不手際も、緊張感と事務方の処理能力の高さに助けられているらしく、私に対してほどは、アスペルガー症候群らしいミスが出ないようです。
恐らくこれは、主人が自分の得意分野で、自分で仕事を創造し、自分でコーディネートしているからだと思います。
いわば、一国一城の主だからこその成功で、一般の企業で会社のルーティンに従う仕事では、そうはいかなかったでしょう。
宇宙人のような人ですが、悪意がない(本人は謝罪しないので、むかつきますが)ので、人としては「おもしろい人」です。
家庭において、子供を育てるという役割を担うことで、アスペルガー症候群の特性が、困ったこととしてあぶり出されて来たように思います。
主人の場合、自分の専門性が、将来収入に結び付くという信念はとても強かったです。
現実的に、通訳などの語学力を生かした仕事を本業にしてくれた方が良いと説得したこともあります。
でも、だんだんと彼の宇宙人的な不器用さが分かるにつれ、「きっと、この人は自分のやりたいことを、やりたいようにしか出来ないんだろうな。」「それなら、何が何でも実現してもらわねば。」と考えるようになりました。
運にも恵まれ、主人の希望がかなって、本当に良かったと思います。
大人のアスペルガー症候群は、社会的に大成するか、転職を繰り返すなど、うまく行かないかの両極端になることが多いようです。
いずれにしても、人間関係は緊張感が強くて、非常に限定された範囲になると思います。
因みに、主人には、私や息子たち以外に、密接な付き合いをする血縁者や友人関係はありません。